老後を迎えて自宅のダウンサイジングを考える人は少なくないだろう。広くなってしまったそれまでの自宅が売れたとしても、慎重に引っ越し先を選ばないと後々後悔する可能性がある。子供が独立した後、一軒家を売り払って築15年の中古マンションを購入した60代男性が語る。
「駅から徒歩8分ほどの2LDK・53平米のマンションに夫婦で引っ越しました。敷地は割と広く、低層で総戸数30戸とゆとりのあるところが魅力で、防犯設備や機械式の地下駐車場も完備。家を売ったお金と退職金を頭金にしたのでローンも少なく組めて満足しています」
リタイア後に快適な駅からほど近いマンションへ──理想的に思えるが、リスクもある。マンショントレンド評論家の日下部理絵氏が指摘する。
「一軒家から手頃な築古マンションに移り住んだものの、その後に諸費用の負担が増えて“負動産”になるケースが少なくありません。マンションでは毎月、管理費や修繕積立金を支払わなければいけませんが、この費用が上がって重い負担となる可能性があります」
マンションは12~15年に1度、大規模な修繕工事が必要になり、各戸の所有者は修繕費の積み立てが義務となる。
「大規模修繕では塗装や外壁補修、屋上やバルコニーの防水工事などを行ないます。東京五輪や昨今のウクライナ情勢で建築資材が高騰するなか、修繕費は2010年に1戸あたり平均約100万円だったのが2021年には約151万円と1.5倍に高騰しました」(日下部氏)
高騰分はそのまま住人にのしかかる。戸数が少なければ負担も大きくなりやすい。