このところ、「チャットGPT」などの新しいサービスが話題となり、AI(人工知能)の急速な進化に注目が集まっている。だが、AIやロボットにできることはまだ限られている。むしろ面倒な計算や手間のかかる作業はソフトやロボットに任せて、人間は“人間にしかできないこと”を仕事にすればいい──そう主張するのが、医学部受験に特化した数学塾講師で中小企業診断士でもある鈴木伸介氏だ。鈴木氏によれば、そのためのカギとなるスキルの一つが「数学」だという。今回は、「給料」をテーマにしたビジネス数学を紹介する。(鈴木伸介著『AI時代に差がつく 仕事に役立つ数学』より抜粋・再構成)
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学校で習った机上の計算や方程式だけが「数学」ではありません。数学は、むしろ目の前の具体的な問題を解決するために「使う」ものであり、実用的な解決策を教えてくれます。そこで今回は、転職に際して何を基準にすべきかを、数学的な考え方を使って解いてみます。
30代半ばのMさんは、キャリアアップのために転職を希望しています。リサーチの結果、最終的に候補をK社とO社の2社に絞りました。社風ややりたい仕事を考えるとK社なのですが、年収にだいぶ差があるのが気になっています。
第1志望のK社は、30代の平均年収は420万円、一方でO社の30代の平均年収は455万円と35万円も違います。月収に直すと約3万円の差なので、給与面を考えるとO社のほうがよさそうに思えてきました。
「平均値」というワナ
K社とO社の30代社員の1人1人の年収を実際に調べた結果、次のようになっていることがわかりました。
●K社(30代社員数14人)=平均値420万円
各個人の年収額
370, 390, 390, 400, 400, 400, 410, 420, 430, 430, 440, 450, 460, 490
●O社(30代社員数10人)=平均値455万円
330, 330, 340, 370, 370, 390, 390, 420, 780, 830
ここから、いったいどんなことが見えてくるでしょうか。