相続手続きを簡略化するにはどうすればよいか──。相続に際しては、亡くなった人の出生から死亡するまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本が必要だ。たとえば、銀行での現金払い戻し手続きでは、これらの戸籍書類一式を提出しなければならない。別の銀行でも同様の手続きをする場合、その書類を返してもらわなければならず、相続手続きが複数ある場合、書類の出し直しの時間と手間がかかっていた。特に不動産の相続手続きは、2024年4月1日から期限が定められるため、うかうかしていられない。
その不便さを解消するのが法定相続情報証明制度だ。司法書士の長谷川絹子さんが言う。
「この制度は、法務局(登記所)に戸籍謄本等の束と相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を提出すれば、その一覧図に認証文を付した写しを無料で何通でも交付してもらえるというもの。この写しを各手続きで提出すれば、戸籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなるのです」(長谷川さん・以下同)
手続きが同時に進められるため、相続が複数ある人には時間の短縮となっておすすめだ。便利なのにまだまだ知られていないこの制度。その手続き方法を詳述する。
過去の本籍地は本人しか知らない
法定相続情報一覧図の作成は、親子関係が複雑でなければ、自分でできる。親が亡くなったらすぐ取りかかれるよう覚えておいてほしい。
「法定相続情報一覧図を作るうえで最も大変なのは、亡くなった人(被相続人)のすべての戸除籍謄本を揃えることです」