日本経済がいよいよ上昇気流に乗り始めた。今こそ「投資」の好機に思えるが、預金を投資信託で運用して増やすことを考えるのもひとつの手だ。ファイナンシャルプランナーの柘植輝氏が解説する。
「投資信託は出資者から集めたお金を投資信託運用会社のプロが運用し、その利益を出資額に応じて分配するものです。プロが選んで組み合わせたかたちで購入できるので、初心者でもほったらかしにして運用益を得やすい。基本的に証券会社で証券口座を開いて始めますが、大手行では銀行窓口で対応してもらえるケースもあります」
株式以外にも債券や不動産など様々な金融商品の組み合わせがあり、リスクや利回りなどを勘案して選ぶわけだが、数ある商品のなかでも“投資信託の王者”と称されるのが「オルカン」こと「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJ国際投信)だ。「とりあえずこれを買っておけばいい」という声は多い。
「オルカンは全世界の株式に分散して投資するタイプの商品で、どこかの地域の株価が下がっても他の地域の銘柄でカバーするなど、リスクとリターンのバランスがとてもいい。
管理などの手数料である信託報酬が年0.1133%と非常に安いところも魅力です。10年、20年と長期保有を前提として運用し、分配金を元本に再投資することで複利効果を望めるわけです」(柘植氏)
“その他の手数料”をどう考えるか
投資信託は手数料が安いほど魅力的だが、信託報酬の安さでオルカンの“王者の座”を揺るがす商品が4月26日に誕生した。
日興アセットマネジメントの「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」(以下、トレイサーズ)。信託報酬は0.0525%とオルカンの約半分となる。オルカンの対抗馬となるのではないかと注目されているという。柘植氏が語る。
「トレイサーズの凄さは、なんといっても手数料の安さで、ほぼオルカンの一強だった全世界株式投資信託の業界に一石を投じました。オルカンもトレイサーズも『オール・カントリー・ワールド・インデックス』という全世界株式の指数に連動する仕組みになっており、構成地域もほぼ変わりません。それなら、信託報酬が安いトレイサーズの最終利益のほうが大きくなるのではと注目されているのです」