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【国際ロマンス詐欺】30代女性から360万円を騙し取った詐欺師の手口「LINE通話は100回弱」

総額360万円を失った香奈さん(仮名)

総額360万円を失った香奈さん(仮名)

「結婚したい」「生涯を添い遂げる人を見つけたい」──そんな切実な感情につけこんで大金を騙し取る国際ロマンス詐欺の被害が相次いでいる。被害者が、直接会ったこともない犯人に騙されてしまう「手口」とは、どんなものなのか。被害者と加害者の双方に取材するノンフィクションライターの水谷竹秀氏がレポートする。【前後編の前編。後編を読む

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 一度も会っていないのに、ネット上のやり取りだけで外国人の相手に惚れ込んでしまった。しかも、夫と4歳の息子がいるにもかかわらず──。

「本気で好きになってしまったんです。だから、お金を払わないと彼との関係が切れてしまうのではないかと……」

 関東地方在住の宮本香奈(仮名、37歳)は、総額360万円を騙し取られた当時の心境をそう振り返った。

 こうした犯罪は「国際ロマンス詐欺」と呼ばれる。SNSやマッチングアプリで別人になりすまし、恋愛感情を抱かせて金銭を騙し取る特殊詐欺の一種だ。私は2020年秋からこの犯罪を取材し、拙著『ルポ 国際ロマンス詐欺』にまとめた。日本での被害状況を調べると、特に新型コロナの流行以降、ネット上で出会いを求める傾向が強まったことから被害が急増していた。

 相談を受ける国民生活センターによると、2022年度の相談件数は941件。男女比では男性が6割を占め、年齢層も10代から70歳以上と幅広い。被害額は数百万円から数千万円、あるいは1億を超える場合もある。

 香奈がその入り口に立たされたのは、インスタグラムに届いた1通のメッセージが発端だった。

「ハロー ビューティフル!」

 相手のプロフィール写真は、欧米系の若い男性で、彫りの深い顔立ちに青い瞳をしたイケメンだった。彼は「アズニー」と名乗り、米カリフォルニア州在住のエンジニアだという。突然の連絡に一瞬戸惑ったが、興味本位にやり取りを始めるとLINEのIDを聞かれ、頻繁にメッセージが届くようになる。言葉はすべて英語だったため、香奈は翻訳アプリを使った。

 アズニーの“愛の囁き”は分刻みに届き、次第に熱量を増していく。

「今日のあなたはとても美しい。天使が地球に舞い降りてきたみたいだ」
「僕はあなたに100万回の笑顔を送るよ」

 100万回の笑顔──。

 こうしたメッセージに香奈がほだされてしまったのは、夫との関係が冷え切っていたからだ。子育てをめぐる考え方の違いから溝ができ、気持ちが離れてしまったのだ。

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