老後のために必要な「年金」。工夫次第で金額を増やすことができるとはいえ、そもそも公的年金は「目減り」が避けられない。制度自体に不安が残っている以上、老後資金が足りなくなる不安は拭えない。足りない分は「じぶん年金」で備えておくしかない。
国は「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」をしきりに推進しているが、老後資金づくりには「iDeCo(個人型確定拠出年金)」こそ注目したい。
iDeCoは昨年5月から、加入年齢の上限が60才未満から65才未満に引き上げられ、「国民年金に加入している65才未満」なら誰でも加入できるよう、要件が拡大されたのだ。
「60才を過ぎてから入っても、老後資金づくりには遅いのでは……」と、あきらめないでほしい。iDeCoには、ほかの運用商品とは違う「税制優遇メリット」があるのだ。
まず、毎月積み立てる掛け金が全額所得控除されるため、所得税と住民税を減らせる。次に、運用している間の運用益が非課税になる。そして受け取る際も、一括なら「退職所得控除」、分割なら「公的年金等控除」となって税制優遇される。これら「3つの節税メリット」があるのだ。
「中でも掛け金が所得控除されるのは大きなメリットです。さまざまな給付金や補助金は住民税をもとに計算されるため、住民税を減らすことができるのはあらゆる“得”につながります」(社会保険労務士の井戸美枝さん・以下同)
引き出せなければ強制的に貯まっていく
iDeCoは3つの節税メリットがある代わりに「60才までは引き出せない」という条件もある。だが、井戸さんに言わせれば、これはむしろ“もう1つのメリット”だ。
「そもそも老後資金のために積み立てているので、引き出せなければ強制的に貯まっていかざるを得ない。老後資金づくりという面では都合がいいのです。ほかにも、つみたてNISAは住民票が日本にないと加入できない一方、iDeCoは厚生年金の一種のため、海外駐在などで住民票が海外に移っても続けられる。またiDeCoは投資商品のスイッチング(商品を変更すること)や配分変更ができる使い勝手のよさも魅力です」