来るべき年金改正に備えて、今からできることは何か──。社会保障審議会年金部会などで議論がスタートしたのが、自営業者らが加入する国民年金の納付期間を現行の「60歳まで」から「65歳まで」へと5年延長する案だ。2023年以降に議論を詰め、2024年に控える5年に一度の年金財政検証で具体化させていくとみられている。
また、サラリーマンが加入する厚生年金についても、これまでの70歳という加入年齢上限が75歳に引き上げられる可能性がある。こちらは、生涯現役を目指す高齢会社員の給料から保険料を5年長く天引きしようという話だ。“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏が語る。
「とりわけ深刻な問題に直面するのは、まだ年金受給が始まっていない現役世代になります。人生設計の大幅な見直しを迫られることでしょう。60歳で引退なんてとんでもないことで、65歳、70歳まで働くことを前提に、今からライフプランを組み立てていくことが求められます」
そのうえで北村氏は「今回の年金改正に備えるうえでは、『じぶん年金を作る』ということが大きなカギになるでしょう」と指摘する。
「厚生年金も国民年金も財源不足が露呈しているから、保険料を長く払わせるような制度変更の話が次々と出てくるわけです。公的年金はあてにならないと認識したうえで、対策を講じていく必要があります」(北村氏・以下同)
“じぶん年金”とは、自ら老後資金を積み立てていく取り組みを指し、毎月一定額を積み立てながら運用し、原則60歳以降に受け取る「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や、投資信託への長期積立投資の運用益が非課税になる「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」などが注目されている。そうしたなかでも北村氏は「節税メリットの得られる金融商品に着目しましょう」とアドバイスする。
「たとえば、最も簡単だと思われるのは保険会社の販売する個人年金保険です。一定の年齢まで保険料を積み立て、その後は一定期間ないし生涯、年金として受け取る貯蓄型の保険ですが、個人年金保険料控除の対象となる商品であれば、払った保険料の一部が税金の還付で戻ってきます。枠を上限まで使うと所得税と住民税を合わせた税率が25%程度なら年1万円程度の節税になり、手続きも保険会社のサポートが受けられるので簡単です。