いま韓国で「日本食」が注目を集めており、特に若者を中心にウイスキーを炭酸水で割った「ハイボール」が大ブームになっているという。日本で流行したことが伝わったようで、ハイボールに使用される日本製ウイスキーの銘柄の人気が沸騰している。特にサントリーが発売している代表銘柄「角瓶」の人気が高まっているが、注目すべきはその値段だ。『経済界』編集局長の関慎夫氏が言う。
「韓国では1本(700ミリリットル)が4万ウォン(約4400円)前後と、日本の価格の2倍以上が相場ですが店頭に並ぶとすぐに売り切れてしまうそうです。これは韓国国内の『日本居酒屋』がブームになったことに加えて、サントリー発の『ハイボール戦略』の上手さも影響していると思います。“炭酸をキツめにして飲んだら美味しい”など丁寧に説明して広げていったと聞いています。マーケティング戦略はさすがですね」
ウイスキーは社業としての“誇り”でもある
こうした韓国での大ブームの影響もあってか、サントリーには大量の商品発注が届いているようだが、社内では難しい判断に悩まされているという。サントリーの40代社員が語る。
「韓国では価格を上げても買っていただけるような状況になっていますが、値段が国内の倍以上で定着していくと『安くて旨い』という角瓶のブランドにも影響が出てきます。社内ではブランド化している山崎や白州と違って『角だけは国内で誰もが愉しめるように流通させるべきだ』という声も根強い。ビールやチューハイなどの大量生産品と違って、そもそもウイスキーは利益よりも社業としての誇りという側面もあるので、今後どうしていくかについては様々な意見が飛び交っています」
前出・関氏もサントリーの社風から「国内の供給量を減らすことはないだろう」と読む。
「サントリーは昔からお酒を卸している飲食店との付き合いでも『高額で買います』という新規客に飛びつくのではなく、既存で付き合ってきた取引先との関係を大事にする姿勢がある。ずっとファンでいてくれた人を大切にしながら、商品を提供していくということです。韓国でいかにブームだと言っても、国内の昔からのファンをないがしろにして供給量を減らすということはないと思いますね」(関氏)