年金制度は、“改悪”の歴史が繰り返されてきた。その最たるものが「受給額カット」だろう。世代間でどのような差が生まれているのか。政府はどのようにして年金を減らしてきたのか。それを知ることで、将来をある程度予想することができるのだ。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。
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一体、私は年金をいくらもらえるのか──毎月、年金保険料を支払っている現役世代の皆さんはきっと気になっていると思います。
いまの70代、80代、90代といった年金“現役”の方たちは「天国の世代」と言えます。が、1961年生まれの私と同じくらいか、それより下の世代は「地獄の世代」です。
例えば、大正14年(1925年)4月2日生まれのAさんと、昭和36年(1961年)4月2日生まれのBさん。いずれも平均月給30万円のサラリーマンとして40年間働いたとします。Aさんの老齢厚生年金(いわゆる2階部分)の受給額は1年間で約144万円、一方でBさんの年金は約102万円。生まれた年が30数年違うと、その他の条件は同じなのに、40万円以上も年金額が変わってくるのです。
なぜそんなことになるのか。そのカラクリは、年金の歴史を紐解くと一目瞭然です。昭和61年(1986年)3月まで、いわゆる「旧法時代」の年金受給額は、以下の計算式で決定していました。
【旧法時代】平均標準報酬月額×10/1000×被保険者期間の月数
実は、年金制度は改正を重ねるごとに、上記の「10/1000」の値が小さくなり、私たちの年金額が減らされているのです。
まず、新年金制度が始まった昭和61年4月以後、20年かけて「10/1000」が「7.5/1000」へと削減されました。これは世代に換算すると大正15年(1926年)4月2日~昭和21年(1946年)4月生まれの方々は段階的に年金額が減り、昭和21年4月2日以後に生まれた方は「7.5/1000」が適応されていることとなります。生まれが20年違うだけで、年金額が25%カットされていることがわかります。