近年、就活用語として定着してきた「ガクチカ」。「学生時代に力を入れたこと」の略で、就活のエントリーシート(ES)や面接試験での定番の質問としてよく知られている。自身の能力や強みをアピールする「自己PR」とは異なり、学生時代の経験に関するエピソードを伝えるため、「経験によって得られたこと」だけでなく「こんな工夫をして成果を出した」という具体的な体験談が必要になってくるという。
大学では、就職率の向上のため初年度教育からキャリア専門家を招聘し、「ガクチカ」を意識した学生生活を送るよう促す動きも目立つ。だが、こうした傾向に対して、長年大学に勤務する教員からは疑問の声も上がっているようだ。
コロナ禍で「ガクチカがない」
都内の有名私立大学に勤務する男性教員・Aさん(50代・経済学部教授)は、“就職予備校化”する大学のキャリア教育に違和感を覚えると語る。
「大学では今、キャリア教育に非常に力を入れるようになっています。かつて教員たちは学生の就活にほとんど関与していなかったのですが、最近では教授会でも『学生にガイダンスや説明会に参加するように伝えましょう』とか、『キャリアセンターをもっと活用してもらいましょう』と話が出るなど、初年度から就職を意識させるようになっています。
『ガクチカがない』と悩んでいる学生には、ゼミで指導して『卒論をガクチカにするように』とテコ入れをすることも……。すべてを就活でのエピソードに変換しなくてはいけない状況には、教員として疑問を感じます。大学は“就職予備校”と揶揄されることもありますが、あながち間違っていないでしょう」(Aさん)