かつては『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という本がベストセラーになるほど、経済大国として世界に君臨していた日本。だが、長きにわたって賃金も物価も上がらず、競争力も国際的地位も下がり、「安い日本」と揶揄されるまでになった。いまや、貧困はあなたのすぐ足元まで忍び寄っている──。
栄養不足で持病が悪化
「この夏は、殺人的猛暑などといわれていますが、できるだけクーラーを使わずに過ごしました。日中は図書館など公共機関やショッピングセンターなどで過ごし、夜は極力扇風機で。熱中症になっても自業自得だとわかっているのですが、少しでも節約したいと思って……。
親が残してくれた家はありますが、オンボロで処分するのにお金がかかるだけ。この先どうやって暮らしていけばいいのか、考えると暗い気持ちになります」
肩を落としてこう打ち明けるのは、新潟県に住む女性・Aさん(52才)。30代半ばで離婚して以来、ひとり暮らしを続けているが、非正規で働く期間が長かったこともあり、貯金もわずか。値上げや、電気代高騰などで生活は逼迫する一方だ。いまこの国には、Aさんのように働けど働けど、苦しい生活を強いられる人たちがあふれている──。
“生活が苦しい中、子育てのために自分の食事を減らし、栄養不足による貧血を起こした”“食品の値上げで料理をしなくなり、冷凍食品に頼っていたら血糖値が上がり、持病の糖尿病が悪化”──こんな壮絶な暮らしぶりを伝えたのは、7月18日放送の『クローズアップ現代』(NHK)だ。
番組のテーマは「値上げ時代と健康」。食費節約のために低栄養状態に陥っている実態やその危険性が紹介され、大きな反響を呼んだ。番組を見ていた60代の女性が声をつまらせる。
「自分の娘くらいの女性が食べるのをがまんして栄養失調なんて……しかも、彼女は看護師としてきちんと働いているのにそんなに生活が苦しいのかと驚きました。働いていても、年金をもらっていても、こんなに貧しくなるなんて、私が若い頃には想像もできなかった」