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慶應など難関校の中学入試の“質”が変化 「暗記力で受験に成功した人の子ども」が苦戦する時代に

中学受験の入試問題の傾向が、難関校を中心に変わってきたという(写真:イメージマート)

中学受験の入試問題の傾向が、難関校を中心に変わってきたという(写真:イメージマート)

 遺伝と学力の関係についての研究が話題になったが、中学受験に遺伝はどれだけ関係があるのだろうか。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)などの著書があるノンフィクションライターの杉浦由美子氏がレポートする「中学受験家庭を悩ませる、遺伝と学力の関係」の第4回。【全6回。第1回から読む

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 中学受験経験者の母親が、自分の子どもの受験を終えて、こう感想を言った。

「私たちの頃は暗記で乗り越えられたけれど、今は他のことが求められるのが大変だなと思いました」

 中学受験を経験していない保護者が「中学受験を経験している親の子どもは有利でいいな」ということもがあるが、実際はそうでもない。なぜなら、試験の質が、親たちが中学受験をした1990年代と今では大きく違うからだ。

理科や社会の知識問題は「昔の方が難しい」

 理科や社会の知識問題は昔の方が難しかった。かなりマニアックな知識を大量に問われたからだ。

 しかし、AIが普及した現在、知識は検索すれば入手できる時代になった。そうなると、暗記の能力よりも論理的な思考力や記述力を入試問題では求められるようになってくる。話題のChatGPTを有効利用するにも論理的な思考力が必要になる。

 理科の入試問題は、かつては半分が知識問題で暗記力を問い、残りが計算や実験の問題だった。しかし、今は知識問題、計算問題、実験に関する問題が3分の1ずつとなっているところが多くなっている。自分が経験したことがない実験の問題を見たとして、それを解くには知識や経験をもとに想像し、推測する力が必要となる。また、算数も数的なセンスを問う図形の問題が易しくなり、論理的な思考力を求める問題が増えている。

 2023年の開成の算数の入試問題が非常に易しかったのが話題になった。図形などの問題は基礎的だったので、開成を受験する子どもたちなら解けて当然のものだったろう。差がついたのは最後の「場合の数」の問題だった。この問題では、最初の一問を解くことが、次の問題のヒントになっている。それを見抜いて解いていくためには論理的な思考力が必要となる。数的なセンスに比べ、論理的な思考力は努力で鍛え上げられる。開成は毎年出題傾向を変えてくるから今後はどうなるか分からないが、少なくとも、論理的な思考力が高い生徒を欲しているのは確かだろう。そして、それは他の難関校も同じだ。

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