子や孫にどう資産を遺すべきか。自分の死後に“争族”を起こさないために書いた「遺言書」が逆効果になることがある。吉澤相続事務所代表の吉澤諭氏が語る。
「多いのが、財産の記載漏れを巡るトラブルです。財産をすべて遺言書に記載することは難しいため、“本遺言書に記載がない財産が過日発見された場合は、長男が相続する”と書くケースも少なくありませんが、親の死後に家から遠く離れた銀行に1000万円の預金が見つかったために、次男が“こういうケースは想定していないはずだ”と主張して争いになった事例があります。記載漏れの額が多ければ多いほど、ドロ沼の“争族”となることが多いので注意しましょう」(以下、「 」内は吉澤氏)
曖昧な文言や内容も“争族”の種となる。たとえば、相続財産を特定せず「3分の2を長男、3分の1を次男に相続させる」などと書き残すと、金融資産だけでなく、不動産も兄弟で共有することになりかねず、どのようなかたちで相続すべきかを巡り揉めるケースがあるという。
「相続人による勝手な解釈の余地を与えないようにするためには、正しく記載するだけでなく生前に家族会議を開いておくことも重要です」
必ず「付言」も記載
専門家立ち会いのもと、正しく遺言書を作成できた──そう安心している人でも落とし穴にはまるケースがある。
「遺言書を作成したあと、状況が変わっているのに修正を忘れると、揉める場合があります。私が見たなかでは、“貸家は長女に相続させる”と書いていたが、実際は亡くなる前年に売却していたことで相続時に長女が納得しないといった事例がありました」