投資で「損切り」をするタイミングが遅れて“塩漬け”になってしまうと、新たな投資の機会を逃してしまうことになる。では、どのように損切りルールを設定すればよいのか。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第62回は「損切り」について。
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株式投資をする上で、ぜったい身につけてほしいスキルは“損切り”です。利益を得るために株式投資をしているのに、損をするなんて耐えられない!と思うのは当然ですが、それでも損切りは、避けるべきではありません。その理由と損切りのルールについて解説します。
損切り上手は株上手
損切りというのは、自分が買ったときの株価よりも安い株価で売却することです。たとえば株価1000円で買った株を900円で売れば100円の損になります。これを“損切り”といいます。株を買うときは、上がると思って買うので、下がってくるのは想定外。証券口座を開いて、自分の資産がマイナス表示されるのを見ると気持ちがふさぎます。とはいえ、株をそこで売らなければ損失は確定しないので、いずれまた上がることを夢見て、見なかったことにしがちです。もちろん、そのまま待っていれば、株価がふたたび上昇することがないわけではありません。しかし、たいていはずるずる下がり続け、さらに売りづらくなり“塩漬け”になってしまいます。
“塩漬け”になっても、とくに自分の生活に支障がなければ構わないと思うかもしれません。何年かかったとしても、買った株価の同値に戻ってくれれば損をしなくてすみます。
でも、ほんとにそうでしょうか? もし仮に、同値に戻るまで3年かかったとしたら、その3年間、その株に投じたお金はなんの仕事もしていません。もし、その株を早めに損切りして、そのお金で上がる株を買っていたら利益を取れていたかもしれないのに、です。
それよりさらに悪影響なのは、塩漬けしている間、株式投資に対して思考停止になってしまうことです。たいていの人は、塩漬け株を「なかったこと」にしてしまいがちです。すると、新たに上がる株を見つけようという前向きな気持ちは起きづらく、しばらく株式投資から離れてしまうのではないでしょうか? そうなると取れたかもしれない利益を取れない機会損失になりますし、投資家としての成長機会も逃すことになります。損切りで痛い思いをするからこそ、次はそうならないよう、より勉強し、考えるようになります。わたしの知る限り、投資で継続的に利益を取れている人は、みなさん損切りを躊躇なく行っています。目の前の小さな痛みが、将来の利益につながると分かっているからでしょう。