ある日突然、連れ合いに先立たれて「ひとり」に──そうなる可能性は、夫にも、妻にもある。だからこそ夫婦で元気なうちから「必要な備え」と「やってはいけないこと」を知る必要がある。
もしも、配偶者に先立たれた“おひとりさま”が身体的な衰えなどにより、自宅での暮らしが難しくなった場合、「老人ホーム入居」という選択肢もある。
介護付きや住宅型など施設の種類や規模は様々だ。価格設定も幅広いことから、自身が望む生活スタイルなどのニーズに応じて選びやすくなった。
しかし、老人ホームに入ればひとり暮らしの不安は万事解決……というほど甘くはなさそうだ。ケアプラン評論家の高室成幸氏が言う。
「老人ホームに入居する際は、その時の自分にとってベストな選択をしているはずです。むしろ難しいのは、入居後に“こんなはずじゃなかった”と想定外の問題に直面することです」(以下「 」内のコメントは高室氏)
その最たるものが「人間関係」だ。
「気の合う入居者が見つからなかったり、見つかったとしても相手の認知症が進んでやりとりが難しくなったり。また男性は過去の肩書きなどに引きずられたままの人がわりと多い。男性が意固地になっていると、入居者の大半を占める女性に話しかけてもらえず孤立するケースもあります」
高室氏は、「男のおひとりさま」で老人ホームに入居する場合の“条件”をこう指摘する。
「孤立しても楽しく暮らせればいい。1日の大半を過ごす居室が心地よく、趣味に使えるスペースがあるかどうか。住み慣れた自宅に近い場所にあるかどうかもポイントです。元気なら馴染みの店などに顔を出しやすいし、友人に面会に来てもらうこともできます。逆に、離れた場所の施設では、自分の部屋以外に“逃げ場”がなくなります」