山の中の大きな桜の木の下に眠り、桜が満開の時期に遺族が集まって──。樹木葬への注目が年々、高まっている。お墓の情報サイト「いいお墓」が行なった「お墓の消費者全国実態調査」によると、昨年同サイトを通して新しく墓を購入した人のうち、樹木葬を選んだ人が調査開始以来はじめて半数を超えたという。一般的な墓や納骨堂を大きく引き離した。
寺や霊園が「永代供養」で管理してくれるうえに従来の墓より安価であり、「先祖代々の墓を守る」という意識が希薄になるなか、子供に継承させなくていいといった理由から樹木葬が支持されているという。
ただし、ブームの陰でトラブルも少なくない。費用が思ったより高くなったり、宗教宗派が不問という理由で選んだら寺院の檀家とトラブルになったり、樹木というよりは“花壇”のようだったりなど、樹木葬を選んだことを後悔する例は後を絶たない。
墓を掘り返す不届き者!?
ひとくちに樹木葬と言っても、大きく2種類に分けられる。人里離れた山林で寺院などが所有する敷地に墓所を設ける「里山型」と、街中の寺院や霊園の一角を樹木で飾る「都市型」だ。そして「里山型」ならではのトラブルもある。
里山型樹木葬は粉砕した遺骨を骨壺に入れずに自然に還す埋葬方法が主流だ。1つの墓所ごとに1本の大きなシンボルツリーが植えられているケースが多く、「広大な自然の中で静かに眠る」という一般的な樹木葬のイメージに近い。
石板や骨壺、納骨室などが不要で管理料を最小限に抑えられるケースもあり、都市型より安価で済む場合が多い。だが、大自然ゆえのトラブルがあるという。千葉県在住の60代男性は、「山登りが大好きだった両親が選んだ山奥の墓に行くのに疲れました」と嘆く。
「両親の希望で山奥の墓所に埋葬しましたが、とにかく自宅から遠くてアクセスが悪い。野生動物が墓を荒らした形跡もあって、身の危険も感じます。墓所の関係者からは、“イノシシが埋葬場所を掘り返して遺骨を引っ張り出して食べているのを見た”という話も聞きましたし……。そもそも、私がさらに年齢を重ねたら気力も体力も衰え、両親の墓参りができなくなるのではと今から心配です」
都内在住の50代男性は、「山が荒れ放題で父の埋葬場所を見失った」と言う。
「運営している寺院がいい加減で山の管理を怠った結果、数年で草木が生い茂ってしまい、父の墓のシンボルツリーの場所がわからなくなってしまいました」