日本を代表する高級ブランドとして定着したレクサスから、ブランド初のバッテリーEV(以下BEV)の専用モデルとして開発されたのが「RZ」。ベースとなっているのはトヨタのBEV専用モデルのbZ4X(およびスバル・ソルティア)で、前後のタイヤにパワフルなモーターをそれぞれ備えた4WDシステムと、レクサスならではの上質でゆとりある居住空間、さらに広々とした荷室など、多くの快適性を備えた上級モデルとして登場した。強烈な存在感を示すエクステリアも印象的だが、その実力のほどは? シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。自動車ライターの佐藤篤司氏がレポートする。
BEV専用のデザインをレクサス風味で仕上げる
レクサスとして「初めてのBEV専用モデル」となっていますが、実はレクサスにはガソリンエンジンモデルも合わせて開発された「UX300e」というBEVが、すでにあります。このUXシリーズは当初、ガソリンエンジンモデルやハイブリッドモデル(HEV)でスタート。その車をベースに開発され、約3年前に登場したのがUX300eです。少々ややこしいのですが、ブランド初のBEVはUX300e、初のBEV専用モデルが今回の主役「RZ450e(以下RZ)」で、そのベースになっているのがトヨタのBEV専用モデル「bZ4X(およびスバル ソルティア)」ということになります。
当然ながらBEV専用の開発であれば、スタイル、足回り、居住性、そして実用性などを追求する際において、ある程度自由がききます。とくにレクサスは2035年までには、すべてのラインナップをBEVに置き換えると公言していますから、上級モデルとして登場するRZは大本命なのです。今後、ブランドにとってのBEV戦略を担うための重要なモデルとして、全力で「レクサスらしさ」を表現し、満載しなければいけないわけです。
ではRZで示されたレクサスらしさとは何でしょうか。目の前に登場したRZのスタイルの存在感、かなり強烈です。グッと低く構えた低重心のプロポーションと、レクサスの象徴として進化してきたスピンドルグリルを「グリルレス化」したというフロントマスクに目が行きます。フロントグリルからエンジン冷却のために空気を取り入れる必要がないため、のっぺりとした顔となり、レクサスはこれを「スピンドルボディ」と呼んでいます。ベースとなったトヨタ・bZ4Xや日産・アリアよりも長く、そして幅広のボディは押し出し感も相当に強く、何とも迫力満点にして斬新。かなりカッコ良く感じました。
さらに前後のタイヤサイズを変えて、フロントよりリアタイヤをワイド化したことと調和させるように、リアに向かってボリューム感が増していくグラマラスなフォルム造りは、スポーティ感を増幅しています。これまでレクサスが仕上げてきた低重心なでスポーティなプロポーションが、このBEV独特のデザインと上手く融合し、全身で躍動感を表現できていると思ったのです。ほとんど町で見かけることもないため、その注目度はかなりのもの。信号待ちや駐車上での周囲からの視線は強烈です。
そのエクステリアの強烈な印象を持ったままドライバーズシートに座ります。一瞬、違う車か? と感じるほど今度は冷静です。飛びすぎず、かと言って地味でもなく、ほどよい落ち着き感があります。エンジンのないBEVらしく、ボンネットが低く出来ているからでしょうか、インパネは低く配置され、前方の視界も良好です。またインテリアの素材にも新しい素材を使用しています。