日本人の年間出生数は、2022年に「80万人割れ」が話題となったが、2023年も減少傾向は加速し、73万人程度に激減するとの予測もある。急激に進む少子化は、学校の経営にまで大きな影響を与えており、公立高校の統廃合も進んでいる。高校の存続は出生数の地域偏在の影響を受け、人口が集中する東京圏と人口流出が続く地方との格差が大きいという。ベストセラー『未来の年表』シリーズの著者・河合雅司氏(作家・ジャーナリスト)の最新分析レポート。【前後編の後編。前編から読む】
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高校への進学に関しては、大学とは異なり自宅から通える範囲の学校の中から選ぶケースが大多数である。このため地域ごとの15歳人口の将来見通しが重要となるが、出生数の地域偏在は大きい。
2022年の東京都の出生数は9万1097人で8.5人に1人が東京生まれである。神奈川、埼玉、千葉の3県を加えた東京圏では22万8012人で全体の約3割を占める。これに対して、高知県の出生数は3721人、鳥取県は3752人、秋田県は3992人にとどまる。
高校受験の年齢になるまでに東京圏から地方に引っ越す人もいるが、親世代はむしろ家族を伴って東京圏へと集中する傾向にあるため、15歳人口は出生数以上に東京圏に集まる可能性が大きい。
東京都の出生数が断トツ1位となっているのは、20代女性が地方から流入し続けているためだ。逆に言えば、20代女性人口の流出が激しい道府県ほど15歳人口は速く減る。それだけ公立高校の統廃合が進み易いということだ。
20代女性流出の影響はこれにとどまらない。出産期の女性が少ない県は人口減少スピードも速くなり、地方税収が落ち込むためだ。こうなると人口が激減する県や市町村は予算編成にあたって費用対効果を厳格化せざるを得なくなる。公立高校では校舎などの老朽化が目立つが、多額の予算を要する建て替えのタイミングで統合や募集停止となりやすくなる。
一方、地方税収が多い東京都などは財源を確保しやすい。小池百合子知事が授業料助成の所得制限を撤廃し、全ての高校授業料を2024年度から実質無償化する方針を明らかにした。こうした“自治体間格差”が拡大すれば、手厚い子育て支援策を展開できるところにますます15歳人口が集まり、人口が激減する地方では高校の統廃合が加速することとなろう。