定年退職した時点で住宅ローンが残っている場合、退職金で「一括返済」すべきかどうかに頭を悩ませる人も多い。
一括返済すれば、将来払う予定だった利息の負担がなくなるので“得”に思えるが、問題点もある。「実は一括返済が望ましいのは一部の人に限られます」と話すのは、税理士でマネージャーナリストの板倉京氏だ。
「日本人は借金を抱えることを嫌う傾向が強く、一括返済すれば借金があるという精神的負担からは解放されます。しかし、それによって手元の資金が大幅に減ってしまい、急遽まとまったお金が必要になった時に対応に窮するリスクがあります。
また、返済を終えると団体信用生命保険(団信)の適用が終了します。団信は、契約者に死亡など万が一のことが起きた際にローン残債がゼロになる保険。これがあることで死亡保険に加入しなくて済むケースは多い。不測の事態には団信で対応できるので、無理して一括返済する必要はないという考え方もできます」
そうした前提を踏まえて一括返済の判断をするには、「ローン金利」と「手元資金の額」という2つのポイントがあると板倉氏は指摘する。
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