裏金問題などで国民の不支持は高まり、足元が揺らぐ岸田政権。しかし世界を見渡すと、アメリカ・バイデン政権やイギリス・スナク政権の支持率は低迷しており、G7の首脳たちも政権維持に汲々としている。
「確たるイデオロギーに基づいて国を司り、国際的なリーダーシップを発揮できる為政者は見当たらない」と指摘するのは経営コンサルタントの大前研一氏。いま、なぜ世界で“リーダー不在”が広がっているのか? 大前氏が解説する。
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2024年の世界と日本はどうなるか? 残念ながら明るい展望は開けない。その理由は、リーダーシップのある指導者が世界にも日本にもいないことだ。
日本では、前号で指摘したように、岸田文雄首相が経済愚策を連発して内閣支持率が20%前後に落ち込んでいるにもかかわらず、それに代わる新リーダーは見当たらない。自民党の政治資金パーティー裏金問題もあって“日本丸”は羅針盤を失い、どこに向かっているのかわからない状況だ。
世界を見渡しても有力なリーダーはいない。
2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻に加え、2023年はイスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの間でも戦闘が起きた。しかし、これを誰も止めることができない。国連は機能不全で存在意義がなくなっている。
従来なら“世界の警察官”を自任してきたアメリカがリーダーシップを発揮すべきである。ロシアのプーチン大統領の暴走にストップをかけ、ウクライナのゼレンスキー大統領を交渉のテーブルにつかせられるのはアメリカだけだろうが、実際は“武器商人”と化して火に油を注ぐだけだ。
イスラエル・パレスチナ問題も、1993年に当時のクリントン大統領の仲介によって、イスラエルのラビン首相とパレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長との間でパレスチナが国家を樹立してイスラエルとの「2国家共存」を目指す「オスロ合意」が成立したのだから、アメリカはイスラエルにパレスチナ国家の樹立を支援するよう求めて共存を実現しなければならない。しかし、どちらの戦争解決も、バイデン大統領の指導力では不可能だ。
国連も1947年に「2国家共存」を決議していながら、何も決められないでいる。パレスチナ自治区の紛争地域に国連軍を派遣するなど、やるべきことはたくさんあるはずだ。