コロナ禍がようやく一段落し、インバウンドビジネスが活況を取り戻すなか、米紙『ニューヨークタイムズ』が「2024年に行くべき52カ所」を発表。前年の同特集で「盛岡市」が2位に選ばれたのに続き、今年は「山口市」が3位に選ばれて大きな話題となっている。
盛岡と山口を推薦した作家・写真家のクレイグ・モドさんは、20年以上日本に在住し、日本中を何千キロも歩いてきた経歴の持ち主。モドさんは、盛岡や山口を選んだことについて、自身のサイトで「京都、金沢、広島が日本の(レコードの)A面だとすれば、山口と盛岡は B 面」と述べ、「あたたかいコミュニティの範囲内で活動し、自分の小さな貢献が周囲の人々の生活に有意義に積み重なっていくのを感じながら、人間的なスケールで充実した生活ができる」(編集部訳)と説明している。
この特集の効果は絶大で、昨年2位に選ばれた盛岡市の観光施設では、来訪者が一気に3倍も増えた例もあったというが、次に選ばれそうな日本の街はどこか? 日本全国を旅した経験のあるライター・金子則男氏が考察し、5つの街をピックアップした。
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弘前市(青森県)
モドさんが明かしているように、選択の基準の1つとなっているのが街の規模。盛岡市の人口が約30万人、山口市の人口が約20万人なのに対し、弘前市は約18万人ですから、第1ステップはクリアです。
弘前といえば何と言っても弘前城が有名ですが、それ以外にも市内には洋館が多く立ち並び、フォトジェニックな場所が多い街。りんごの美味しさは言うまでもありませんし、市民が愛してやまない岩木山の風景も絶品です。弘前城の桜は全国的にも有名ですが、冬はストーブ列車、夏はねぷた祭りがあり、イベントはよりどりみどり。少し足を伸ばせば、風情満点の秘湯もたくさんあります。
北海道には北海道ならではの壮大さがあり、南九州や沖縄など、暖かい地方には独特の開放感がありますが、こと旅情ということにかけては東北地方はピカイチ。弘前市内の歓楽街は令和の時代になっても昭和の雰囲気を残しており、夜もしっかり楽しめます。
会津若松市(福島県)
東京から直線距離だと200kmちょっとしかないのに、交通事情のせいで“秘境感”がある会津若松は歴史の街。街のシンボルである鶴ヶ城(会津若松場)は全国にその名が轟く名城ですし、白虎隊の悲劇的な物語は日本人の心を捉えて離しません。
やたら有名観光地を駆け回る日本人とは違い、日本にやって来る外国人旅行客は、歴史や自然を愛でる傾向が強いのが特徴。熊野古道や木曽路の宿場町などに外国人が溢れているのはその一例ですが、戊辰戦争や白虎隊のストーリーは、国境や宗教を越えて人の心に訴えかけるものがあるでしょう。
こちらも弘前と同様、近隣には名湯が点在していますし、喜多方まで足を伸ばせば、ラーメンと蔵造りの町並みを楽しめます。唯一、会津若松にウィークポイントがあるとすれば、盛岡や山口より観光地として遥かにメジャーなところでしょうか。