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「政治とカネ」問題は政治資金の流れの“デジタル化”で即解決 それでも政治家のオンライン申請率「わずか5.7%」の絶望感

国民のお金の流れに対してはデジタル化を進めている一方で…(イラスト/井川泰年)

国民のお金の流れに対してはデジタル化を進めている一方で…(イラスト/井川泰年)

 裏金問題からの挽回を図ろうとする岸田政権。しかし、派閥を解体したところで政治の不透明なお金の流れがなくなるわけではない。どうすれば「政治とカネ」の問題を解決できるのか? 経営コンサルタントの大前研一氏は「根本的な再発防止策は簡単明瞭」と断じる。以下、大前氏が解説する。

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 泥棒に自分を縛る縄をなわせるのは不可能だ。

 自民党が政治資金パーティー裏金問題の再発防止策を議論するために設置した「政治刷新本部」(本部長・岸田文雄首相)のことである。同本部のメンバーに入った安倍派(清和政策研究会)の10議員のうち9議員が政治資金パーティー収入の一部を裏金にしていた疑いがあると報じられた。そんなお手盛りの組織に実効性がある再発防止策など作れるはずがないだろう。第三者委員会を設置すべきである。

 岸田派(宏池会)、二階派(志帥会)、安倍派は解散を決定したが、派閥がなくなっても「政治とカネ」の問題は解決しない。

 しかし、根本的な再発防止策は簡単明瞭だ。政治資金の流れをすべて電子化・デジタル化してガラス張りにすればよいのである。

 政治資金については、2010年に総務省が約20億円をかけて「申請・届出オンラインシステム」を導入し、政治団体が専用ソフトで作成した収支報告書をインターネット上で24時間・365日提出できるようになっている。このシステムを利用すれば、誰が、いつ、誰に、いくら献金したかということは透明になる。

 それは別に難しいことではない。いまや多くの企業が社員の給与振込から経費精算、取引先への請求書まで電子化しているのだから、政治団体も同じようにすればよいだけの話である。

 ところが政治資金規正法は、国会議員関係政治団体の会計責任者の申請・届出オンラインシステム利用について「電子情報処理組織を使用する方法により行うよう努めるものとする」(第19条の15)と定めている。つまり、強制力のない「努力義務」なのだ。オンラインシステムを利用しない場合は、窓口に領収書などの資料とともに紙の報告書を提出すれば事足りる。

 このため、オンラインシステム導入から10年以上も経過しているのに、2022年に国会議員関係政治団体が政治資金収支報告書をオンラインで提出した割合は、たったの5.7%でしかないことがわかった。

 これを報じた日本経済新聞(2023年12月12日付)によれば、オンライン提出に消極的な理由について、ある与党議員事務所の担当者は「紙に慣れているので新しいシステムを使うとミスする恐れがある」と語り、別の議員事務所の秘書は「窓口に持って行けばミスを訂正してもらえる」と説明したという。ふざけるな!と言いたい。

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