岸田文雄・首相は支持率挽回を狙って自民党の派閥解体に踏み切ったが、そもそも派閥は必要ないもので「派閥で徒党を組もうとするのは何かと不安だから」と指摘するのは経営コンサルタントの大前研一氏だ。「その意味では暴力団やマフィアと通底する原理である」とまで断じる。自民党が本質的に変わるためには何が必要なのか、大前氏が提言する。
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自民党の派閥は政治資金パーティー裏金事件を受け、政治団体(政治資金規正法が適用される献金の受け皿)としては相次ぎ解散した。
本稿執筆時点では6派閥のうち岸田派(宏池会)、二階派(志帥会)、安倍派(清和政策研究会)、森山派(近未来政治研究会)の4派閥が解散を決め、茂木派(平成研究会)と派閥に数えられていない谷垣グループ(有隣会)、石破グループ(水月会)も解散の方針だ。存続する政治団体は麻生派(志公会)だけとなる。
派閥解散ドミノの引き金になった岸田文雄首相による突然の“自爆テロ”は痛快だった。自民党の重鎮で派閥の領袖である麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長、二階俊博元幹事長らに断りなく岸田派解散を宣言して今回の流れを作ったことは、低迷している支持率を挽回して9月の自民党総裁選で再選を目指す「乾坤一擲の勝負」ならぬ「窮余の一策」だろうが、その決断はとりあえず評価してよいと思う。
もし、岸田首相が事前に麻生副総裁や茂木幹事長、二階元幹事長らに根回し・相談していたら、派閥解散の流れはできなかったはずだからである。
だが、そもそも派閥は必要ない。
政治家が派閥を作るのは、政党そのものに政策も人材育成の組織や仕掛けがなく、議員も「徒党」を組まなければ何かと不安だからだ。その意味では暴力団やマフィアと通底する原理である。つまり、最も自己保身・自己利益が見込めそうな集団に入っているだけの話であり、各派閥は「政治団体としては解散しても政策集団としては存続する」などと言っているが、もともと「政策」で集まっているわけではないのだ。
ちなみに、暴力団の場合は、法律(暴力団対策法)に基づき、手下の犯罪に上層部の指揮命令や承諾がなかったとは考えられないとして、トップまで同罪に問う判決が下っている。