日本においては作り手への感謝を示すためには“残さず食べる”ことが美徳とされることもある。そこで、判断に迷うのがラーメンの「スープ」である。スープにこだわっていることをアピールするラーメン店は多く、原価がかかる上に実際その仕込みは大変な作業であることもよく知られている。ラーメンの器を空にする=完食(※「完全まくり」の略で「完まく」と呼ぶ店もある)するために、スープまで飲み干すのがマナーなのか。悩めるラーメンファンに話を聞いた。
こだわりのラーメン店ほど緊張感
メーカー勤務の40代男性・Aさんは、職人気質のラーメン店に行くと、「スープとにらめっこすることになる」という。
「たとえば家で自分でラーメンを作る場合、市販品のだしと麺がメインなのでスープは残してしまうことがほとんど。でもスープにこだわっているとアピールしている、あるいは明らかにこだわっていることがわかるようなお店で、特にカウンターに座ると、『店員さんの前で残したら失礼かな』とか、『がっかりされるのかな』とかいろいろ考えてしまって……」
Aさんは、ラーメンのスープに手間がかかっていることを感じると、「飲まないといけない」というプレッシャーになるのだという。
「最近、つけ麺のスープ割の追加が有料だという店をめぐり、スープのコストが議論になりましたが、逆にいえばラーメンのスープを残すということは、お金を捨てているようなことになるのでしょうか。ただ実際、全部飲むのは厳しいものがある。こだわりのラーメン店ほど、個人的に緊張感が漂います」(Aさん)