「老後2000万円が不足する」との報道が、いまでは「このまま物価高が続けば4000万円に?」などという試算も出てきて、不安は増幅するばかり。本当にそんな額が必要なのだろうか。ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さんが語る。
「2000万という数字は、2017年の総務省による家計調査の高齢者の全国平均を基に『60~90代までの30年生きた場合、月約5.5万円が不足する』と試算されたもの。でも、コロナ禍の2020年には、不足額が2000円ほどになっているなど、年によって変わっているんです。
いたずらに心配せず、わが家の公的年金はいくらもらえるのか、毎年誕生月に送られる『ねんきん定期便』などで確認してみましょう。年金も所得税・住民税・社会保険料が引かれますから、85%くらいを想定すること。
50代を過ぎるとライフイベントや住宅ローン・教育ローンなどが終わり、老後の収支が変化していきます。各家庭の収支をもう一度、確認するのにいい時期です」
変動費を削るより固定費を見直す
そのうえで、月々の家計の支出をおおまかにチェックし、使いすぎの項目を把握する。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんが説明する。
「特に家庭の三大固定費である『保険料』『通信費』『住居費』、最近では4つ目に『サブスク』が入りますが、この4つを重点的に見直してください。
たとえば、医療保険と死亡保険の両方に加入していた場合、今後病院にかかる確率が高くなるので医療保険は削りづらいですが、死亡保険はお子さんが小さいときに万が一何かあった場合には有効だったものの、老後に向けては整理するのも選択肢の1つです」(風呂内さん・以下同)