3月22日に4万1000円台をつけた日経平均株価が伸び悩んでいる。5月に入ってから史上最高値を更新して4万ドルに達したニューヨークダウとは対照的に、日経平均は4万円台を前に足踏みが続く。はたして2024年後半の株式市場はどうなっていくのか。グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏が、世界の金融情勢を紐解きながら、混迷する株式市場の動向を読み解く。
金融引き締めに見えても過剰流動性相場が続いている
世界の金融市場を左右する米国の状況を見ると、依然として根本的なテーマは「過剰流動性」にあることに変わりはない。これまでFRB(連邦準備制度理事会)は金利を引き上げる金融引き締め策をとってきたが、実のところ、まだまだ市場にマネーが溢れかえる過剰流動性相場は続いているのだ。
市場に資金を供給してきたFRBのバランスシートをみると、総資産はコロナ前の4兆ドル規模からコロナ禍のピーク時には9兆ドルまで膨らんだ。そこから米国の金利は上昇し、金融政策は引き締め方向に進んでいるように見えるが、いまも7.4兆ドル規模で大きくは減っていない。コロナ前と比べると2倍近いマネーが溢れている。むしろまだまだ緩和的な状況が続いていると見た方がいい。こうした環境は株式市場にとって大きな追い風である。
もちろん懸念材料もあるが、現段階で心配するようなものではない。たとえば昨年3月にシリコンバレーバンクなどの破綻が相次ぎ、金融危機の懸念も高まったが、FRBが支援に乗り出し、金融危機にならないことが確認できた。また、米国のオフィスビルなどの商業用不動産価格の下落によって、今年2月には商業用不動産向け融資の焦げ付きでニューヨークに拠点を持つNYCB(ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ)が赤字に陥るなど、米国の金融機関を取り巻く状況は厳しいが、これも金融危機に発展するとは今のところ考えにくい。
なによりこの先も米国の景気や株価が悪化しないことは、11月に控える米大統領選が担保しているとみていいだろう。現職のバイデン大統領と前職のトランプ氏のどちらが勝つかはふたを開けてみるまでわからないが、バイデン大統領としては、再選に向けて景気や株価を悪化させるわけにはいかないのは明らか。万が一にでも米国経済を悪化させれば大きな失点となるため、今後も株高を支える過剰流動性が担保されている状況なのだ。