マイホームは人生の中でも一、二を争う高い買い物。一生に一度の買い物で失敗をしないためにはどうすればよいのか。さくら事務所会長の長嶋修氏がマンションにまつわる様々な「落とし穴」を実例とともにまとめた新刊『マンションバブル41の落とし穴』から、資金計画と住宅ローンを組む際のポイントを解説する。
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好立地のマンション価格が値上がりする一方で、日本人の平均年収はあまり上昇していません。2024年は春闘の結果、大手企業を中心に賃金が上昇傾向にはあるものの、マンション価格の値上がりには追い付いていません。
一般のファミリー層には、都内の5000万~7000万円台の物件が特に人気ですが、それを無理なく購入できる層は限定されます。
昔からよく「住宅ローンの借入適正額の目安は、年収の5倍程度」と言われてきました。仮にこの説にのっとって考えてみると、たとえば世帯年収が800万円の場合、借りてもいい金額は4000万円まで、ということになります。
頭金が多少あったとしても、4000万円の借入では人気物件を買えるかどうか微妙なところです。実際には年収の6倍や7倍の住宅ローンを組むケースも多くなっています。
住宅ローンで借りられる金額は、おもに年収に応じて決まりますが、上限はおおむね年収の7倍前後です。そのため、年収500万円の人が借りられる金額は、最大で3500万円程度になります(厳密には、金融機関や物件の種類などによって異なります)。
これだけだと希望するマンションの購入資金が不足する場合も多いため、共働き夫婦は住宅ローンを夫婦でそれぞれ組む「ペアローン」を選択するケースもよくあります。ペアローンは借入金額を増やせるのが最大のメリット。仮に夫が年収500万円、妻が年収300万円であれば、借りられる金額の上限を5600万円程度まで増やせます。
ただ、これだと借入適正額である年収の5倍(4000万円)を大幅に上回ります。適正額を超えているということは、返済がかなり大変になることを意味します。
住宅ローンを組む前に必ず思い起こすべきなのは「借りられる金額=借りていい金額ではない」ということです。夫婦で年収の7倍まで借入をしたとすると、月々の返済に追われて貯蓄があまりできず、日々返済のためだけに働いているような状況に陥りかねません。そんな状況で、夫婦のどちらかが病気やケガをするなどの不測の事態に見舞われたら、簡単に資金ショートを起こします。
そもそも、住宅を購入する際には、ある程度の頭金を用意するのが原則ですが、現実には頭金ゼロで家を買う人が増えています。借入金額が少額ならフルローンでもいいですが、7000万円の物件を買うために、世帯年収1000万円の共働き夫婦がペアローンを組み、7000万円借入れるというのは、相当リスキーな行為です。