好調エヌビディアの勢いは日本株の一部銘柄にも波及(ジェンスン・フアンCEO/時事通信フォト)
生成AI向けの半導体で世界をリードする米エヌビディアの時価総額が約3兆3400億ドル(6月18日時点)に達し、一時、世界トップに躍り出た。マイクロソフト(約3兆3200億ドル)やアップル(約3兆2900億ドル)を上回る破竹の勢いに、個人投資家が“便乗”する方法はあるのか──。エヌビディア株の上昇トレンドに乗って急騰期待の日本株・投資信託を専門家が厳選した。
(ページ下部では、図表で《日本にもこんなにある「急騰期待のエヌビディア関連株8」》を紹介!)
生成AIの普及が本格化する時代をリードしているのがエヌビディアだ。マーケットバンク代表の岡山憲史氏が解説する。
「AIに適した高性能半導体を開発した同社は、2022年11月に生成AIのChatGPTが公開されて以降、一気に注目を集めました。株価は1年半で約8倍となり、マイクロソフトやアップルなどGAFAM(注:米国の巨大IT企業であるGoogle、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon.com、Microsoftの5社を指す)と呼ばれる他の米国巨大IT企業を横目に、まさに一人勝ちの様相です」
今年に入ってからも株価は約3倍に上昇し、かつてエヌビディアの買収交渉に乗り出すも不調に終わったソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が、「逃した魚は大きかった」と臍を噛んだほどだ。
生成AI「市場規模は3倍」へ。長期的な上昇余地は大きい
同社の強みについて、グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏はこう見る。
「AIの黎明期からエヌビディアありきの開発が進められてきたため、今後どこが画期的なAIを開発するにしてもエヌビディアのGPU(画像処理半導体)は必須。AIの“ゴールドラッシュ時代”に必需品となるシャベルとツルハシを提供している恰好の同社の存在感は、当面揺るぎそうにない」
これほど株価が沸騰すると、今から買って“高値掴み”する懸念も出てくるが、まだまだ“買い”ということなのか。
「市場予想によると、3年先の利益予想から現在の株価水準を見る予想PER(株価収益率)はエヌビディアもマイクロソフトもアップルもほぼ変わらず、エヌビディアだけが特別に割高ではない。長期的にはまだ上昇する余地を多分に残していると言えます」(戸松氏)
岡山氏も同じ見通しを立てる。
「生成AI機器の出荷サイクルは3~5年と予想され、現在はまだ2年目。市場規模は最終的に3000億ドルと現在の3倍になるとも予想されている。同社は今年後半にAI向け次世代半導体『ブラックウェル』を投入予定で今後も一段と業績拡大が見込まれます。現在120ドル前後の株価は、この先少なくとも150ドルまで上昇すると多くの市場関係者は見ています」
エヌビディアが必要とする半導体製造の独自技術を持つ日本企業
米ナスダック市場に上場するエヌビディア株は米国株を取り扱うSBI証券、楽天証券、マネックス証券などの大手ネット証券で購入でき、新NISAの成長投資枠で買うことも可能だ。
ただ、日本から同社株を買うより、米国株と比べて割安な傾向が目立ち、情報を得やすいといった要素を踏まえて、「日本株の関連銘柄を探すほうがチャンスは大きい」とプロは口を揃える。
戸松氏は「エヌビディアは主に半導体チップの開発・設計を担い、製造は外注になる。エヌビディアやその外注先が必要とする半導体製造の独自技術を持つ日本企業は多い」として、こう続ける。
「半導体製造に不可欠な検査・測定装置で世界シェア100%を握るレーザーテック、切断・切削・研磨に特化して世界シェアトップのディスコなどは、エヌビディアはじめ半導体関連の王道銘柄として今後が大いに期待されます」
エヌビディアと関係の深い企業も含めた戸松氏、岡山氏の注目銘柄は別表の通り。個別株のリスクが気になる人は、分散投資できる投資信託も選択肢になる。
日本にもこんなにある「急騰期待のエヌビディア関連株8」
「たとえば野村アセットマネジメントが運用する『野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)』は、エヌビディア株の組み入れ比率が約30%。同社の成長の恩恵を受けながら、リスク分散もできる」(岡山氏)
エヌビディアはじめ有力な米国IT企業で構成されるNASDAQ100に連動する投資信託も狙い目だと戸松氏は言う。
「米国は利上げしたとはいえ、市場に大量の資金が供給されたままの過剰流動性相場が続いており、景気悪化を避ける思惑から少なくとも11月の大統領選まではこの状態が続く。そうなるとNASDAQ100などインデックス(株価指数)に連動する投資信託も注目です」
もちろん、有望テーマとはいえ株価には上下動がつきものだ。
「どのような成長株でも株価の調整局面は訪れます。激しい値動きのエヌビディアのような銘柄は一度売られ始めると一斉に投げが加速して急落する場面もある」(岡山氏)
具体的には、「米国でさらにインフレが高まるなどして長期金利が上昇すればエヌビディア株にも調整が入る可能性はある」(戸松氏)とみられているが、「現時点では上昇が続く可能性も十分ある」(同前)という。世界最強となったエヌビディア株から、目が離せない。
※週刊ポスト2024年7月12日号