仕事関係を除いて、人づきあいの中心が妻という男性は多い。そんな人ほど、いざ妻に先立たれると周囲とのコミュニケーションが途絶してしまうリスクがある。
「夫婦ともに元気なうちに、人間関係の構築を意識しておくべきでした」
そう語るのは、5年前に妻を亡くした都内在住の男性・Aさん(69)。妻の没後、人間関係がごっそりと抜け落ちたという。
「長い結婚生活では、実生活でも精神的な面でも妻に頼りっきりでした。話し相手であり、趣味の登山に出掛ける唯一の相手でもありました。子供や親戚との連絡も妻任せでした」
Aさんの現役時代の人間関係は妻が半分以上、職場の同僚が3割ほどだった。定年後に職場の同僚との関係が消え、さらに妻が死没すると人づきあいがほぼゼロになった。
「これではまずいと思い、シニアが学び直しをする地域サークルに通おうと思ったのですが、ひとりで参加するのが怖くて踏み出せませんでした。
えいや、で行ってみたら共通の趣味を持つ友人ができたので良かったものの、やはり夫婦2人のほうがどんな集いにも参加しやすい。生前から妻と一緒に交友範囲を広げておくべきだったと後悔しました」(Aさん)
配偶者を亡くした人の集いである「没イチの会」を主催する一般社団法人シニア生活文化研究所の小谷みどり代表理事が指摘する。
「配偶者を失って人間関係で困るのは男性が多い。子供との連絡すら妻を通してといった人は危険です。孤独を募らせて自暴自棄になり、セルフネグレクトになって引きこもりになる人や、うつになってしまう人もいます。ひとりになる前に、配偶者以外の人とのつきあいを考えておく必要があります」