キャリア

スポーツや習い事をやめて勉強に専念させる価値はあるのか? 現役塾講師が明かす「中学受験最大のデメリット」

小学校高学年は才能や興味を伸ばす「ゴールデンエイジ」でもある(イメージ)

小学校高学年は才能や興味を伸ばす「ゴールデンエイジ」でもある(イメージ)

 幼少期から続けてきたサッカーや野球、水泳などのスポーツに、ピアノや英会話などの習い事……。それが小学校高学年になると、中学受験の勉強に専念するため、それらの継続を諦めるケースが多いようだ。しかし、受験のために子供の好きなことを断念させるのは本当に正しい選択なのか──。中学受験の“伴走者”たる保護者の赤裸々な悩みを、フリーライターの清水典之氏が識者にぶつけた。(全5回シリーズの第4回。第1回から読む

【シリーズ全5回】
お金も時間もかかる中学受験 「偏差値下位の私立中学なら進学する意味はない」の意見を高校受験塾の現役講師はどう考えるか
中学受験で“勉強から逃げる子”は晩熟タイプかもしれない 偏差値50台の私立中から高校受験で開成に合格する例も少なくない
「高1でbe動詞がわからない」受け身で過大な量の勉強を続けた結果、中高一貫校の“深海魚”に 中学受験にありがちな「勉強を強制させられるリスク」
スポーツや習い事をやめて勉強に専念させる価値はあるのか? 現役塾講師が明かす「中学受験最大のデメリット」
「子供にトラウマを残しそう…」悩ましい中学受験から“撤退”の決断 現役塾講師は期限を重視、撤退後の勉強への向き合い方

 * * *
 過熱する一方の「中学受験」ブーム。中学受験を体験した親世代の人に聞くと、みな「昔より学習量も難易度も上がっている」と口をそろえる。

 中学受験塾に通うには、野球やサッカーなどのスポーツや英会話などの習い事などはやめざるをえなくなり、そこまでしても競争の激化で振り落とされる子供たちもいる。「サッカーを続けたい」「勉強がつらい」などと訴える子供に、親はどう対処すればいいのか。

 Xのアカウント名「東京高校受験主義」で知られ、この5月に『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』を上梓した高校受験塾講師の東田高志氏に、子供の塾以外の習い事をやめさせたことで悩むこんな保護者の声を聞いてもらった。

《今通っている中学受験の塾は、6年生になると週に5日間になり、土日もテストや授業で潰れます。土日が埋まるとスポーツは無理で、うちの子も5年生のときにサッカーをやめ、6年生に上がったところで英会話教室と日程がかぶったのでそれもやめて、塾に専念させているのですが、本人はサッカーを続けたかったようで、本当にこれで良かったのか悩みます》(44歳、自営業男性)

 東田氏は、受験勉強以外の活動を諦めざるを得ない状況こそ、中学受験の「最大のデメリット」と考えているという。

「東京の都心部にある小学生のサッカークラブでは、中学受験組が小学4年生の大会を最後に引退して、5年生、6年生の人数が足りなくなるというのが常態化しているチームが多々あります。私には子供のスポーツや習い事の指導をしている知り合いが何人もいて、よくこの話題になるのですが、皆さん口を揃えて、『小学6年生まで続けることに意味がある』と言います。『最上級生としての1年間に得られる経験は何物にも代えがたく、最後までやりきって初めて1つの活動になる』と。

 中にはスポーツや習い事と受験勉強を両立して、小学6年の最後まで続けながら、御三家に合格するという、まるで二刀流の大谷翔平さんみたいな子がいますが、極めて稀です。塾側も他の活動は辞める前提でカリキュラムを組みますし、成績が下がったりすると、受験勉強に専念せざるを得なくなります。私は中学受験の最大のデメリットはここにあると考えています」(東田氏)

次のページ:子供の「意思」がどちらにあるのか
関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。