企業概要
オンワードホールディングス(8016)は、61社から成るアパレル持ち株会社。「23区」や「自由区」「ICB」など中高価格帯ブランドを基幹ブランドに、海外ブランド「J.プレス」「ジョゼフ」等を展開しています。海外売上は全体の1割を構成しています。
これらアパレルに加えて、バレエ関連用品(「Chacott(チャコット)」)やオーガニックコスメ(「product(ザ・プロダクト)」)、ペット関連用品となごみグッズ(クリエイティブヨーコ)、カタログギフト(大和)なども展開しています。
さらに法人ビジネスとして、一般法人向けの制服・販促品提供や、小売・アパレル等法人向けのOEM/ODM事業も展開しています。最近ではファンケルの制服をやっています。法人向けは一定の収益が見込まれる事業であることから、同社では安定成長事業として2030年に売上高600億円(売上構成比20%)を目指しています。
選択と集中:不採算店舗・事業からの撤退、無駄の削減
同社の創業は1927年で、大阪に設立した「樫山商店」を前身とします。第二次世界大戦後の1950年代に紳士服メーカーとして成長し、1960年代は高度経済成長期を経て日本を代表する紳士服メーカーに飛躍。1990年代には、婦人服を本格化し、『組曲』を筆頭に『23区』『ICB(アイ・シー・ビー)』とブランド展開を加速させ、百貨店を中心に事業を拡大させていきました。
2009年には直営Eコマースサイト「ONWARD CROSSET(オンワード・クローゼット)」を開設しオンライン販売をスタート。2017年には、低価格・短納期を実現したオーダーメイドスーツ『KASHIYAMA(カシヤマ)』ブランドを開始しました。
ここまでの拡大期を経て、2019年以降は事業の集中と選択を進めたことが注目されます。
同社では、2019年10月~2022年8月の間に、国内約1,800店の不採算店舗を閉鎖。また同時期、イタリア事業や米セレクトショップ「オープニングセレモニー」、「ジルサンダー」など不採算事業から撤退、コロナ禍で低迷したホテル事業も2022年に売却するなど、不採算事業を思い切って整理し、収益性の高い事業に集中する事業体制が敷かれました。
例えば海外事業においては不採算事業から撤退した一方で、アメリカの「J.プレス(J.PRESS)」やヨーロッパの「ジョゼフ(JOSEPH)」、アジアでの生産・販売事業など、それぞれのエリアのコア事業に注力する体制が整えられました。海外アパレル事業は赤字ではありますが(約2億円)、2024年2月期に9億円の大幅な損益改善が見られ、今期2025年2月期には黒字化が期待されます。
また一方では、バックオフィスのアップデートも実を結びつつあります。店舗在庫を最小限に抑え、東京と大阪の2つの物流センターから迅速に配送できる体制を構築し、同時に製品の企画から販売に至るまでの流れを一元管理する「PLM(Product Lifecycle Management)」システムを導入しました。商品の企画から生産、販売までに発生するムダを削減し、在庫適正化が進展するという効果が得られることとなったわけです。
【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。