もし老後資産が尽きてしまったら――そんな不安から節約や運用に精を出すばかりで一向に「使うこと」には意識が向かない。結果、そこそこの貯金を残したまま最期を迎えてしまう。自分の人生のために、もっとお金を使えたはずなのに……そうした後悔を残さないためには、生きているうちにどうお金を使い切るかが重要だ。
昨年ステージ4のすい臓がんと診断(その後、「原発不明がん」と診断)された経済アナリストの森永卓郎氏(67)はこう話す。
「私はがんと診断されるずっと前から、生きているうちに使い切ることを意識してきました。ひとつは相続面での煩わしさから子供たちを解放してあげたかったから。
子供に相続させようと無理な節約をして資産を遺す人が少なくないですが、お金を遺すと遺族や法定相続人の間で“争続”が生じる恐れがあります。しかも遺産が大金ではなく、数百万など少額のほうが骨肉の争いが生じやすく、一銭も残さず旅立つほうがトラブルは生じないんです。
そもそも子供の扶養義務は成人するまでと考えているので、子供が成人したら投資も保険も必要ありません。そういったことに使うお金があるのなら、自分や配偶者のためだけに使うほうがいいでしょう」
「私なら1日で100億円でも使えますよ」
そんな森永氏は、好きな事にお金を使い続けてきた。
「若い頃から集めてきたミニカーやオーディオ機材など趣味のコレクションは『ゴミ』なので大したお金はかかっていませんが、問題はその置場所です。2014年には1億8000万円を投じて所沢市(埼玉県)にコレクション館『B宝館』用のビルを購入しました。
私なら1日で100億円でも使えますよ。以前、中古のスペースシャトルが土地込みで売りに出ていて、すごく安かったのですが、置き場の建設に数百億円かかるため、泣く泣くあきらめたことがあります」