「2025年問題」──来年は「団塊」世代がすべて75歳以上となる節目とされているが、人口減少問題に詳しいジャーナリストの河合雅司氏によれば、厳密には今年2024年には同世代がすべて後期高齢者となるという。超高齢社会がさらに深刻化する中で、社会保障制度維持のために政府が「次なる手」として打ち出したのが「全世代型社会保障」という制度だ。しかし、果たして政府の思惑通りになるのか? 河合氏が解説する(以下、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』より抜粋・再構成)。
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日本崩壊の萌芽は政府の政策にも内在しているが、最も分かりやすいのが社会保障制度だ。早くから対策に取り組んできた分野ではあるが、想定を上回る人口減少のスピードに、打つ手がだんだんと限られてきた。
2024年は、団塊世代がすべて75歳以上となる年だ。「2025年問題」と誤認識が定着しているが、厳密には1年早い。
75歳を超えると大病を患う人が増えるため、今後の医療や介護をめぐる公費負担の急伸が懸念されている。内閣府は1人あたりの平均医療費が2019年比で2030年には10%増、平均介護費は34%増と予想している。
2040年にはさらに膨らみ、それぞれ16%増、63%増になるという。こうした高齢者の激増が「2040年問題」として懸念されている。
足元を見ても、総務省によれば2023年9月15日現在の75歳以上人口は2005万人だ。2000万人を突破したのは初めてであり、高齢者の総数(3623万人)に占める割合は55.3%である。
平均寿命が延びており、「より年配の高齢者」が増えている。総人口に占める80歳以上人口の割合は10.1%だ。社人研の将来推計によれば2060年頃には総人口の約2割に達し、5人に1人が該当するようになる。