定年後を迎え、子供たちも独立し、家の中が寂しいからとペットを飼い始めるも、想像以上の出費で家計が圧迫──そんな事例が珍しくないと話すのは、ファイナンシャルプランナーの宮崎真紀子氏だ。
「お金に代えられない価値があるとわかったうえで飼い始めるものですが、それでも予想以上の出費に悩む人が多い。特に落とし穴になりがちなのがチワワやトイプードルなどの小型犬です。中型犬や大型犬に比べて飼育費が少なくて済むと考えがちですが、小型犬は免疫力が弱いことが少なくないため、治療費がかさみます。
トイプードルを飼っている人から受けた相談では、定期的に通う獣医の診察代と薬代が重く、老後資産を取り崩しているとのことでした」
ワクチン接種をはじめとする必要経費も多い。
「子犬の時期は免疫力をつけるために3回のワクチン接種が一般的です。1回2000~5000円ほどかかる。2022年にはペットショップでの購入時にマイクロチップの装着が義務づけられました。これにも5000~1万円かかります。そのほか日々のエサ代はもちろん、ケージやトイレシーツ、リード、ブラシなど小物類で数万円が飛んでいきます」(同前)
厄介なのは、愛犬の「可愛らしさ」が出費を加速させることだ。宮崎氏が続ける。
「孫や子供にお金がかからなくなった分、犬には少しくらいお金を使ってもいいと高齢者の財布の紐が緩くなりがち。実際、小型犬用の洋服を見るたびに思わず買ってしまうという相談も来ます。
少しでもキレイにしてあげようと、1回5000~9000円ほどのトリミングの頻度もついつい増えがちです」
犬の生涯にかかる費用は計250万~300万円とも言われる。
「医療の進歩でペットの寿命は延びています。家計と飼育費をしっかりと考えたうえで迎え入れてほしい」(同前)
※週刊ポスト2024年9月20・27日号