人生後半戦の「住まい」の問題はややこしい。選択を間違えると、想定外の事態に陥ってしまうこともある。たとえば、子供が独立して夫婦2人暮らしとなり、定年後を見据える──そんなタイミングが50~60代だろう。
老後資金を貯めるためにも、2人暮らしでは広さを持て余す自宅を売却して、小さいマンションへの引っ越しを検討するケースは多い。しかし、老後資金の捻出が目的だったはずが、新居購入に関する費用がかえって重い負担となる場合がある。
新居の購入には自宅の売却資金と退職金の一部を充てることが一般的だが、自宅が売れないと地獄を見ることになる。住宅ジャーナリストの日下部理絵氏が語る。
「少子高齢化が進んで郊外の一軒家の価値が下がるなか、立地や家の状態などによっては買い手が見つからないことも珍しくない。資金繰りがショートして新居の購入計画が流れたり、新居のローンが始まっても旧宅の戸建てが売れず、固定資産税や維持費の二重払いを強いられたりするケースもあります。
住み替えの際は、転居先の物件購入時に“自宅が売れなければ契約は白紙”にできる『買い替え特約』を付けるのを忘れないようにしましょう」
住み替え先の物件選びも一筋縄ではいかない。
「一般的には自宅の売却後、1か月程度で引き渡しになり、それまでに新居が決まらないと仮住まいの部屋を探す必要が生じ、別途の費用がかさみます。引き渡しまでにと焦って、条件のよくない物件を購入して後悔するケースは少なくありません。買い替え特約の利用を含めて、極力売り買いが同時進行になるよう気をつけてください」(日下部氏)