動画配信サービスの参入で、地上波テレビでのスポーツ中継がどんどん消滅している。1つのビッグマッチが有料配信のコンテンツとして強みを発揮する格闘技から始まった動きは、長いシーズンを楽しむ他のスポーツまで波及している。地上波テレビから「スポーツ中継が消える日」がやってくるのだろうか。
10月13~14日、東京・有明アリーナで国内史上最大級のボクシング興行が開催された。7つの世界タイトル戦と那須川天心のアジア・パシフィック王座決定戦の8大タイトル戦が行なわれ、アマゾンプライムビデオが独占ライブ中継した。アマゾンプライムビデオは5月6日にも、東京ドームでの4階級制覇王者の井上尚弥と元世界2階級制覇王者のルイス・ネリ(メキシコ)による4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチを配信。ボクシングの世界戦は地上波テレビから動画配信サービスへ完全に移行している。在京テレビ局制作関係者が言う。
「世界戦などのビッグファイトは有料コンテンツに料金を支払う形式が莫大な利益を生むようになった。売上の10%を番組制作のテレビ局、40~50%をプロバイダーのケーブルネットワーク企業が取り、残りにチケット収入や海外放映権料が加えられたものから会場設備費などの経費を差し引いて、残りをメーンイベントに関わったもので分配する。ファイトマネーもここから分配されるが、無料放送のテレビの制作費からではなかなか捻出が難しくなっている。
那須川天心が武尊に勝利した世紀の一戦(2022年6月)では5万人を集めて入場料が20億円、生配信したABEMAの契約件数が50万件(5500円)で27.5億円を売り上げている。この時の両者のファイトマネーが5億円とされます」