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Netflixはテレビを殺すか

《徹底解剖》Netflixドラマが地上波を凌駕するこれだけの理由 「青天井の制作費」「時間の成約がない」…『極悪女王』『地面師たち』の“すごいこだわり”

Netflix制作のドラマは何が違うのか(左から小池栄子=時事通信フォト、ピエール瀧、豊川悦司)

Netflix制作のドラマは何が違うのか(左から小池栄子=時事通信フォト、ピエール瀧、豊川悦司)

 米国発の「ネットフリックス(Netflix)」に代表される有料の配信サービスが急速に存在感を高めている。「韓国ドラマ」など海外作品を配信するだけでなく、日本の豪華俳優に精鋭スタッフを集め、テレビ局を超えるクオリティのドラマを次々と制作するようになってきたのだ。

 長与千種(唐田えりか)がライオネス飛鳥(剛力彩芽)をリングの四隅にある鉄柱のひとつに叩きつける。飛鳥は苦しい表情を見せながらも、すかさず反撃。一進一退の攻防に後楽園ホールに集まった超満員の観客は大盛り上がり。そして、飛鳥は大技「ジャイアントスイング」を炸裂させる──。

 これは話題のドラマ『極悪女王』のワンシーン。劇中の放送時間は約10分。だが、この場面を撮影するためだけに4日間をかけたのだという。『極悪女王』は1980年代に女子プロレス旋風を巻き起こした全日本女子プロレス“最凶ヒール”のダンプ松本(ゆりやんレトリィバァ)の半生を描く。豪華キャストによる大作だが、地上波のテレビで観ることはできない。ネットフリックスによる「配信」のドラマなのだ。

 この数年、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオといった有料の会員制配信サービスが加速度的に普及している。無料放送の地上波とは、どう違うのか。テレビ業界ジャーナリストの長谷川朋子氏が語る。

「契約して定額を支払わないと視聴できず、連続ドラマでも1話から最終話まで一度に配信されることが多くて“一気見”できる。1話何分と決まっておらず、地上波とは違って固定CMも入らない。表現の自由度が非常に高いです。制作期間や制作費が地上波とケタ違いでスケールが大きいことも魅力です」

 事実、『極悪女王』の企画・脚本・プロデュースを担当した鈴木おさむ氏は関西のテレビ番組で、「ギャラは地上波の5倍だった」と明かしている。

 そうした配信作品は「企画段階」からすでに地上波とは違うという。ネットフリックスが日本で普及するきっかけのひとつが、2019年の『全裸監督』。AV監督・村西とおる氏の半生を描き、バストトップの露出や大胆な濡れ場シーンが描かれた。原作者の本橋信宏氏は当時、制作側のオファーに「本気度を感じた」と語る。

「ネットフリックスのプロデューサーから、コンプライアンスが厳しくなった時代に、『地上波ではできない作品をドラマ化したい』という熱意を伝えられた。担当者はモデルである村西監督に『こんな男が日本にいてまだ生きているのか』と感銘を受けたそうです。

 ですが、当初は村西監督は消極的でした。彼は“昭和の男”だから、『実写化するならスクリーンでやるべき』という考えだったんです。ですが、向こうが人気俳優の山田孝之さんのスケジュールを押さえてくれたことで翻意した。山田さんは向こう3年のスケジュールは押さえられている状態でしたが、本(脚本)を読んでもらうところから説得して、快諾いただいたそうです」

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