『極悪女王』や『地面師たち』など、Netflix配信ドラマの勢いが止まらない。視聴率が伸び悩む地上波テレビの落日が伝えられる一方、Netflixをはじめとする有料の「配信コンテンツ」は話題作をつくり続け、既存のテレビを飲み込もうとしている。テレビ界の大物監督や敏腕プロデューサーなどが続々とネット配信に移籍する中、現場の出演者は何を感じているのか。地上波、配信ともに出演作の多いお笑いコンビ・NON STYLEの井上祐介(44)に胸の内をきいてみた。【前後編の前編。後編を読む】
(以下、地上波と配信の制作費やギャラの違いについてNON STYLEの井上祐介が実感を込めて明かす)
「優秀な人材がネットへ」
「撮影現場の雰囲気は地上波も配信も同じですよ」と井上は語る。
「以前は民放のドラマをつくっていた大根仁氏が、『地面師たち』の監督を務めてNetflixと新たに5年契約を結んだように、今はテレビを制作していた優秀な人材がネットに引っ張られています。だから撮影現場の雰囲気はテレビも配信も変わらない感じ。演者のクオリティも、地上波のバラエティとNetflixで話題の『トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~』で、それほど変わらず一緒やと思います」(井上・以下同)
最大の違いは「制作費」にあるという。
地上波の連ドラ予算は1クール3000万~1億円ほどとされるが、配信は1話8000万円とも言われる。井上も「配信の予算は青天井」と驚く。
「テレビはいろんなスポンサーからお金をちょっとずつもらって番組をつくるけど、極論を言えば、Netflixは自分らでお金を山ほど出して番組をつくることができる。せやから制作費に上限がなくて青天井でしょう」
制作費の違いが如実にあらわれるのは「セット」だという。
「バラエティ番組で一番お金がかかるのはセットなんです。金回りが苦しくなった地上波はセットをなるべく壊したくないけど、配信はお金があるから遠慮なくセットを壊せます。仮にダウンタウンさんが日テレで年末にやっていた『笑っていはいけないシリーズ』をNetflixでリメイクしたら、大きな建物を丸ごとドカンと爆破したりする壮大な番組になるはずですよね」
Netflixは出演者のギャラが1桁違う!?
井上は番組宣伝のためにNetflixのドラマ『今際の国のアリス』の撮影現場を見学したことがある。そこでもネットの勢いに目を見張ったと振り返る。
「CGを駆使したプロジェクションマッピングでスタジオに渋谷の街を再現していました。そんな芸当は今のテレビにはできませんし、出演者だけでなくスタッフも含めて自由に飲み食いできるケータリングも充実していました。演者クオリティは一緒やとしても、環境クオリティはお金をかけられる配信の自由度が高い。ただ、僕が出演しているABEMAの恋愛リアリティショー『今日、好きになりました。』はそれほどお金がかかってない(苦笑)」
『極悪女王』の企画・脚本・プロデューサーを担当した鈴木おさむ氏は関西のテレビ番組で「ギャラは地上波の5倍だった」と明かした。気になる演者のギャラはどうなのか。
「民放のテレビ番組とABEMAの『今日好き』のギャラは一緒ですよ。Huluやアマゾンプライムビデオの番組にも出たことがあるけど、それほど大金がもらえるわけやない。ただしNetflixだけは別格で頭一つ抜けているとよく聞きます。出演者のギャラもNetflixはゼロが1つ違うって。まあ、本当のところは知りませんけどね……」
■後編〈ノンスタ井上が語るバラエティ番組のコンプラ論「『ブス』と呼ばれるのも僕の仕事」「ルールの中で戦い方を見つけた人間が勝つ」〉につづく