日本の物流を担い、「クロネコヤマトの宅急便」で知られるヤマトホールディングス(HD)が、赤字転落の苦境に喘いでいる。その背後では、世界最大のネット通販事業者であるアマゾンとの関係に緊張が走っている事情があるという。サービスを享受する利用者にとっても、決して見過ごせない事態が表面化しつつある。【全3回の第1回】
頼んだ荷物が届かない!
クリスマスや年末年始のために注文した商品が、待てど暮らせど届かない。「配達が遅くなって申し訳ありません」。そう言いながら宅配ドライバーが荷物を持ってきたのは、年が明けた1月初旬──。
各地でそんな事態が起きたのは2016年末のこと。
ネット通販の普及で荷物が急増して配送の人員確保が追いつかず、予定通りに荷物が届けられない「パンク(遅配)」状態となったのだ。物流ジャーナリストの刈屋大輔氏(青山ロジスティクス総合研究所代表取締役)が言う。
「荷物が急激に増えすぎた影響で、ヤマトHDでは従業員の長時間労働や過重労働が常態化。2016年には残業代の未払い問題が発覚し、翌年に残業未払い分として計230億円を支払いました。問題の是正のため、ヤマトHDは大口顧客の荷物の受け入れ量を抑制する『総量規制』と、運賃の大幅値上げを実施しました」
従来の運賃やスケジュールで配送できなくなる事態は「宅配クライシス」と呼ばれた。今、ヤマトHDにこの時以来の危機が訪れようとしている。