サブスクが広く普及したいま、ビデオソフト市場(DVDとBDのセルおよびレンタル)の売上は減少の一途をたどっている。ビデオソフトメーカー各社が加盟する一般社団法人日本映像ソフト協会の資料によると、2012年に4802億円だった市場規模も2023年には2132億円と半分以下だ。とりわけレンタルビデオ(DVD・BD)店を取り巻く環境は厳しく、去年には東京・渋谷のスクランブル交差点に位置するSHIBUYA TSUTAYAがレンタルサービスを終了したことも大きな話題となった。
消えゆくレンタルビデオの現場で、いまもなお根強いジャンルは「成人向けコンテンツ」なのだという。客層は中高年以上が多く、なかには万引きする不届き者もいる。レンタルビデオ店の店員が実状を明かす──。【前後編の前編】
レンタル落ちDVDは月に2000本も
「ここ数年レンタルビデオ店の閉店ラッシュが相次いだことで、常連さんから『この店はつぶれないよね?』と心配の声をかけられることが多いです」
そう話すのは都内のレンタルビデオ店に勤めるSさん(30代/男性)だ。Sさんの店舗では、いまのところレンタルサービス終了の予定はないというが、売場の縮小や入荷数の減少など、少なからず時代の煽りを感じているという。
「そういった事情もあり、ウチのお店では回転率の悪い作品を“レンタル落ち”として販売するようにしているのですが、一般作(映画・ドラマ・アニメなど)はサブスクで視聴できることもあってか、そこまで売上に結びつきません。
一方で、根強く人気があるのは成人向けコンテンツ。もともとそうしたコンテンツをレンタルするのは概ね40~70代の男性なのですが、月に2000本以上も店頭に並ぶレンタル落ちDVDが、この層に飛ぶように売れていきます。多い月だとそれだけで100万円以上の売上になることもあります」(Sさん。以下「」内同)
衰退するレンタル市場において、“成人向けコンテンツ”は最後の希望なのかもしれない。昨今、成人向けECサイトでは一部クレジットカード決済が停止されることもあり、成人向けコンテンツのセル・レンタル需要は依然として高い。
ただしその需要の高さがアダとなり、店員の頭を悩ませる問題も起きている。万引きだ。