肥満になると糖尿病や高血圧症、脂肪肝などを併発しやすくなり、生活習慣病が次々と発症する「メタボリックドミノ」が起こるケースもある。その最適な治療方法にはどのようなものがあるのか──。シリーズ「名医が教える生活習慣病対策」、腹腔鏡での減量手術を日本に初めて導入した四谷メディカルキューブ減量・糖尿病外科センターの笠間和典センター長に話を聞いた。【肥満が原因の糖尿病の手術治療・前編】
胃がん患者が多い日本では普及しなかった「減量手術」
肥満が万病の元であることは間違いありませんが、太っていても健康であれば無理に減量する必要はないかもしれません。しかし、糖尿病や高血圧、脂質異常症、脂肪肝などの合併症を併発している場合は「肥満症」と呼ばれる病気であり、体重を落とすことが治療の第一歩となります。
減量するためには、まず「食事」「運動」「薬物」「行動療法」などの内科治療が行なわれますが、一時的に体重が落ちてもほとんどの方がリバウンドして治療前に戻ってしまいます。
「内科治療抵抗性」と呼ばれる高度肥満患者に対する治療として、欧米では1950年代から減量代謝改善手術(以下、「減量手術」)による外科治療が行なわれています。この手術は減量効果だけでなく、肥満に関連する病気、とりわけ糖尿病に効果があることがわかっています。また、減量手術がホルモンの分泌に影響を与えるため、糖尿病が寛解するケースも報告されています。
「米国糖尿病学会(ADA)ガイドライン2017年版」では、「肥満を伴う糖尿病の治療」として、BMIのレベルに応じて外科治療を推奨する治療アルゴリズムが採用されています。日本糖尿病学会や日本肝臓学会、日本肥満学会、日本肥満治療学会においても、それぞれのガイドラインに減量手術が掲載されるようになりました。