DeepSeekの登場でAI分野でどのような変化が予想されるか(Getty Images)
米国市場を襲った1月27日の“ディープシーク・ショック”はその後、各方面で様々なインパクトを与えている。
2023年に設立されたばかりの中国ベンチャー企業・深度求索(DeepSeek)が1月20日、最新の大規模言語AIモデル(LLM)“DeepSeek-R1”を発表。それが数学、コーディング、推論などの複数のベンチマークテストにおいて、OpenAI が開発したChatGPT-4oに匹敵、あるいはそれ以上の性能を示した。
オープンソース(無償で公開し、再使用、改変、再配布が許されるソフトウエア)で提供され、しかも、ユーザー企業が支払うAPIコスト(ユーザー側ソフトウエアにDeepSeek-R1を共有させるための費用)は100万トークン当たりインプットで0.14ドル、アウトプットで0.25ドルだ。ChatGPT-4oでは順に2.50ドル、10.00ドルで、前者は後者の6%、3%と極端に安い。
深度求索は中国企業であり、DeepSeek-R1は、中国の法律、政治的信条を逸脱しないよう、中国市場向けに最適化されている。無料アプリ“DeepSeek”にChatGPT-4oとの違いを尋ねてみたところ、「DeepSeekは中国語圏のユーザーや中国市場向けのタスクに特化しており、ローカルなニーズに応える強みがある」といった答えが返ってくる。個人情報の扱いは全て中国の法律に基づいて行われる以上、DeepSeek-R1を利用する日米欧企業はほぼ皆無ではないだろうか。
しかし、だからと言って、DeepSeekの影響が小さいということではない。中国系AI関連企業は深度求索の最先端製品を利用することで、それを利用しない欧米系企業と比べ高い競争力を得ることができる。
DeepSeek-R1の仕組みについては、論文で詳しく解説されており、しかも、オープンソースで提供されている以上、DeepSeek-R1を模倣して深度求索よりも安い価格でAIサービスを提供しようとする競合会社が必ず出てくるはずで早晩、米国市場でもLLMの価格破壊が起きる。LLMのコモディティ化はOpenAIなど巨額の先行投資を行う米国大手にとっては大きな痛手となる。もっとも、LLMがほとんど公共財のような扱いになってしまえば、これを利用する立場の企業、例えばアップルのような企業にとっては有利に働く。