トランプ大統領との直接交渉にのぞむ橋本会長の”秘策”とは(時事通信フォト)
日本製鉄によるUSスチール買収計画は、ここにきてトランプ大統領から「少数株主であれば問題ない」「社債や、他にもいろんな方法があるだろう」などと、さまざまな発言が飛び出している。すでに日鉄幹部が渡米しており、橋本英二・会長兼CEO(69)による直接交渉に向け水面下の地ならしの動きがあることをうかがわせる。100%子会社化を前提にしてきた「日鉄の米国戦略」と、トランプ氏の「誰も(議決権の)過半数を取らせない」という主張を両立させる“ウルトラC”とは、どのようなものなのか。
林芳正官房長官が「(日鉄が)これまでとは全く異なる大胆な提案を検討している」と述べたのは、日米首脳会談後の2月10日だった。その後、関係者の間では“どんなスキームでこの難局を打開するのか”という会話がしきりに交わされているが、「鉄の結束」とも評される日鉄社内から手がかりは漏れてこない。
“事前に漏れた案はつぶれる”の不文律もあるから無理もないが、日鉄を知る政財界の要人に話を聞くなかで、公約数的に見えてくる有力説もあり、そう考えられる理由もある。以下、考えられるいくつかのプランを書いておきたい。
もっとも参考になりそうなのは「BNA方式」だ。すなわち、日鉄が中国の宝山鉄鋼とともに合弁出資した「宝鋼日鉄自動車鋼板」(上海市)の方式だ。
これは三村明夫社長時代の新日鉄(当時)が2004年、日本から進出した自動車メーカー向けに薄板鋼板などを供給するため中国国営の「宝山鋼鉄(現・宝武鋼鉄集団)」とともに折半出資して設立した会社だ。宝山が工場などの現物を出資するかたちで50%、新日鉄が資金を拠出するかたちで50%をそれぞれ出し合った。
昨年8月末で両社は20年間の合弁期限で契約を更新せずに合弁を解消したが、他国の“ナショナルフラッグ”となる企業に出資した例として日鉄に知見が蓄えられていることは大きなメリットだ。