NYダウ指数は、いよいよ下げトレンドに転じたのかもしれない。5月31日のNYダウ指数終値は1.41%安の24815.04ドル。下げ幅では5月で3番目だが、その下げ方が悪い。6月4日は0.02%高と下げ止まったものの、同日のNASDAQ総合指数は1.61%安となるなど、ハイテク関連の下げが止まらない。
NYダウ指数の日足チャートを見る限りでは、かなり変形した形ではあるが三尊型の天井圏を形成した感がある。2月中旬以降の買いが大きなシコリとなっている。
下落要因ははっきりしている。貿易戦争の激化による景気下落懸念だ。
トランプ大統領は5月5日、2000億ドル相当の中国からの輸入品に対する追加関税率の引き上げ、新たに輸入品3000億ドル相当に対する追加関税措置の導入などを発表。その後、華為技術への禁輸措置を発動。それを受けて、中国側も追加関税率を引き上げ、レアアースの対米禁輸をにおわすなど、一歩も引かない姿勢を示した。
米中間の貿易戦争が激化する中で、トランプ大統領は5月30日、突如として、メキシコからの輸入品に関税を課すと警告。輸入品価格の上昇、サプライチェーンの断裂、再構築による負担増などへの懸念が一層高まった。景気見通しの悪化は、債券市場において逆イールドを発生させている。
トランプ大統領の政策はある意味で一貫性がなく、ある意味では首尾一貫している。
一貫性がない点は対中貿易政策である。もし、対中強硬派たちが言うように中国の台頭はアメリカにとって脅威であり、中国を叩いておきたいのならば、中国包囲網を作ることが得策である。軍事上の包囲網に限らず、単純な貿易先の変更においても、サプライチェーンの再構築においても同様である。
しかし、トランプ大統領は、欧州、日本といった同盟国に対しても、貿易戦争も辞さないといった強い姿勢を示している。FTA(自由貿易協定)を結ぶメキシコに対してさえも貿易戦争を仕掛けるかのような高圧的な態度で交渉を進めている。これでは中国包囲網どころか、逆に中国からアメリカ包囲網を形成されかねない。