安倍政権が2019年「骨太の方針」で打ち出した「最低賃金」の引き上げと、全国一律にする動きは、果たして日本経済を救うことになるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
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安倍政権の2019年「骨太の方針」の柱の一つが最低賃金の引き上げだ。全国平均の時給1000円を目標にするという(ちなみに、立憲民主党の参院選公約の目玉は「最低賃金1300円」)。
都道府県によって異なる最低賃金は2016年から3年連続で約3%ずつ上がり、現在は最も高いのが東京の985円、最も低いのが鹿児島県の761円、全国加重平均額が874円だ。一部の職種を「全国一律」にするという動きもある。
最低賃金の引き上げを推し進める政府の方針に対し、日本商工会議所は「大幅な引き上げは中小企業の経営を直撃し、事業の存続を危うくする」と反対を表明したが、これは当然だ。地方には人件費が安いから成り立っている企業が少なくない。もし、最低賃金が1000円や全国一律になったら、立ち行かなくなる企業が続出するだろう。
とはいえ、最低賃金の引き上げは諸外国でも実施されている。これは一見、国民生活を支え、票につながるから政治的には正しいように思えるが、政策としては間違っている。人件費の上昇で経営が苦しくなった企業が雇用を減らし、失業率が上がりかねないからだ。