飲食店員が客のいないところで交わす「ノーショー」という言葉をご存じだろうか。「No show」(「姿を現さない」という意味)は「キャンセル客」を指し、「×番テーブル、結局ノーショーだって。コース料理をもう作り始めていたのに参ったなぁ」などと使われる。
近年、この「ノーショー」が飲食店を悩ませ続けている。予約を入れたものの、行けなくなってしまった然るべき理由があって、事前にそれを伝えていれば、店側もそれなりの対応ができる。が、近年急増しているのは、悪質な「ドタキャン」「バックレ」だ。
経済産業省の『No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート』によると、当日の無断キャンセルが飲食業界全体に与えている損害額は、年間で約2000億円。さらに、通常の予約のうち、1日前、2日前に生じるキャンセルも加えると、その発生率は6%強に達し、被害額は約1.6兆円に及ぶ、と推計されている。被害はなんとも深刻だ。
テーブル備え付けの網で牡蠣や魚介、肉を焼いたり、各地の生牡蠣を楽しめる『かき小屋 新橋2号店』店長の新井幹浩さんが嘆く。
「宴会シーズンに約30名の予約が反古にされました。来店時間になっても1人も来ず、15分過ぎて幹事さんに電話しても鳴りっぱなし。30名といえば、当店の座席の半数近くを占めます。30分お待ちしてあきらめて、並んでお待ちいただいていたお客様をお通ししましたが、悔しくつらい思いをしました」