いまや中高年の不安は死亡リスクより“長生きリスク”だろう。日本人の健康寿命は男性は平均72歳だが、70代後半になると12%、80代前半は28%が「要介護」になる。
「妻に先立たれたら、料理も家事もできないから老人ホームに入るしかないかな」
定年後世代の男性なら一度はそんなことを考えたことがあるのではないか。ましてや、要介護になれば選択の余地はなくなる。
では、老人ホームへの入居は何歳がベターなのか。実は、ホームの入居開始年齢は平均85歳、平均入居期間は3~4年とされる。介護アドバイザー、横井孝治氏の話だ。
「75歳くらいになるとホームへの入居を考え始める人が多いが、自分で入居を決断する人は意外に少ない。家族が『お父さん、もう1人暮らしは無理でしょう』と判断して入居させるケースが多いのです」
ホームへの入居には2つのパターンがある。1つはまだ元気で自活できるうちに「セカンドライフ」の場所としてホームを選ぶケースだが、早く入ればその分、入居一時金など費用は高くなる。もう一つができる限り自宅で生活し、いよいよ介護が必要になって入居する場合だ。
その費用と健康度合いのバランスの判断が難しいが、介護評論家の佐藤恒伯氏は「80歳」が入居のめどになると語る。
「有料老人ホームは入居年齢が高いほど入居一時金が安くなる料金体系を取っているのが一般的です。毎月の利用料は一定でも、70歳で入居すれば一時金700万円、75歳なら540万円、80歳以上なら480万円など5歳刻みで1~2割安くなる。80歳以降は一時金が下がらないケースも多いので、健康が許すのであれば80歳まで待って入居するのが費用的にも得になる判断と言えるでしょう」
もちろん、一度ホームに入ると“転居”は費用的にも難しくなるため、ホーム選びは金額にだけ目を向けるのではなく十分な時間をかけて検討したい。
※週刊ポスト2019年8月2日号