“人生100年時代”における「老後資金2000万円不足問題」の本質は、老後が長すぎることにある。20歳から60歳まで40年間、サラリーマンの夫が年金保険料を納めただけで、夫婦が100歳まで、2人合わせて計80年間安心して生きていけるなどという法外な話があるはずはない。
新著『上級国民/下級国民』が話題の作家の橘玲氏によると、その唯一の答えは「老後を短くする」ことだという。60歳の定年時に貯金がなくても、80歳まで働けば「老後」は40年から20年に半分になる。そうして「長く働く」ようにしたうえで、妻と2人で取り組むことが重要、と橘氏は提言する。
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サラリーマンと専業主婦の世帯モデルの弱点は、夫の収入に経済的リスクが集中していることだ。そのため夫は会社にしがみつくしかなく、妻は仮に夫からDVを受けていても耐えるしかない。こうして破綻していく家庭はいくらでもある。
それに対して共働きなら、どちらかが仕事を失ってもリスクヘッジができているし、妻に収入があれば、夫の定年後の再就職の口もじっくり探すことができる。
専業主婦だからといってあきらめる必要はない。私の知り合いは大学を出てからいちども働いた経験がなかったが、子育てが終わった40代半ばから学習教材の会社で契約社員として働き始めた。そこで高い評価を得て、いまでは時給2000円で週3日ほど勤務している。70歳まで働きたいといっているから、生涯収入は5000万円を超えるだろう。これだけのお金があれば、老後生活は大きく変わるはずだ。