アジア初開催となるラグビーワールドカップ2019日本大会の開幕まで、あと1か月あまりに迫った。世界トップクラスの選手たちと日本代表の熱い戦いに注目が集まる。開催国日本には多くのラグビーファンが集まり、大きな経済効果も予想される。
身近な事象と景気の関係に詳しい三井住友DSアセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは、「想定されている以上の経済効果を及ぼす可能性がある」と指摘する。
「大会組織委は海外からの観戦客を40万人と予想していましたが、海外向けチケット販売が好調なのか、かなりの上振れを見込んでいるとの報道もみられます。しかも、W杯観戦に訪れる訪日客は、通常時の外国人観光客とは違う行動をする点も経済効果を引き上げる効果が期待できます」(宅森氏・以下同)
通常の訪日客は中国や韓国などアジアから観光客が中心だが、W杯観戦に訪れるのはラグビー人気の高い欧州からが中心となることが見込まれている。
「欧州の人たちはアジア人と違って長い休暇を取る傾向が強いので、滞在期間も相当長いと見込まれます。訪日客一人当たりの旅行支出は平均15万円程度、そのうち欧州の訪日客一人当たりの旅行支出は平均20万円強ほどですが、長く滞在するほど支出は増えるので、W杯の観戦客はかなりの額を支出することもあり得ます」(宅森氏)
なにしろ、大会は全国12都市で、約7週間にわたって繰り広げられる。ラグビーのコアなファンたちは目当てのチームを追って開催都市を周遊し、その周辺を観光する可能性も十分考えられる。これまでインバウンドの恩恵を受けてこなかった地域とその周辺エリアに莫大な経済効果をもたらすことも期待できるというのだ。
「彼らが日本を気に入れば、リピーターになって東京五輪以降のインバウンド消費に貢献してくれる可能性もある。しかも大会は11月2日までと10月1日の消費増税を挟むので、増税のマイナス効果をある程度吸収してくれるかもしれません」
日本国内でのラグビー人気は今ひとつという印象もあるが、海外からの援護射撃を受けての盛り上がりを期待したい。
文■森田悦子(ファイナンシャルプランナー/ライター)