9月に入ると全国各地で秋祭りが行われ、町内会をあげて盛り上がることだろう。お揃いのハッピを着た老若男女が勇壮な掛け声とともに神輿を担ぎ、終了後はテントの下で酒を酌み交わす。この光景に対してはこんなコメントもある。
「引っ越してきたばかりなので祭りの輪に入れず寂しい」(都内在住30代男性)
「地元の仲間とワイワイやっていて楽しそう。羨ましい」(神奈川県在住40代男性)
実際、東京23区内のとある町内会で祭りを仕切る男性・A氏は飲食店を経営しているが、祭りの良さについて次のように語る。
「オレらは地元あっての商売です。年に一度の祭りはそりゃあ重要ですよ。何週間もかけて準備をしますし、皆で掛け声の練習をしたり、神輿を担ぐ一体感は何度味わっても素晴らしいです。祭りが近づくと商売そっちのけで頑張っちゃいますよ(笑)」
しかし、A氏のように祭りを楽しみにしている者ばかりではない。最近祭りからの撤退を決めた人物もいるという。都内在住の50代男性・B氏は、この10年、地元の祭りに参加し続けていたが、今年からは参加しないと決めた。
「地元に溶け込もうとしたのですが、所詮私は“ヨソ者”だったんですよ……」、そう言ってうなだれるB氏は妻の実家に住んでいる。この60年、地元に根付いている家で、「あの家のお婿さんならば」ということで、B氏も祭りに参加できることになった。
B氏によると「通常のルートでは、祭りに参加することはできません」とも言うが、せっかく参加できるようになった祭りから、撤退を決めたのはなぜなのか。冒頭で紹介したような祭りを羨ましがる声をB氏にぶつけてみたところ、こんな答えが返ってきた。
「それは外から見ているからそう思うだけです。結局、祭りってものは、地元から絶対に離れない人のためのものなんです。私は妻の縁があるため10年間参加することができましたが、それでも常に“外様”扱いです。私が9回目の参加をしたときに2歳の子供がハッピを着て参加したらその子の方が“重鎮”扱い。その子の親も祖父母も、もっと言うとひいおじいさん、ひいおばあさん世代も祭りに参加していたから、その子も“身内”なのです」